もう一つの珍事がある。ここは本来、温泉と富士山が売り物だろう。当然すてきな旅館もいくつかあるが、大浴場に行くと誰もいない。もう一つ大浴場があるのか聞くとここだけとのこと。ただし家族風呂は数カ所あるとの答えだ。客はほとんど外国人で、知らぬ人と裸で風呂には入れないのかもしれない。各部屋にも風呂があるし、家族風呂もある。どちらかに入っているのだろう。お陰で大露天ブロ貸し切りとなった。
また、昼に“ほうとう屋”に入ると6割は外国の人のようだ。ようだとは、一見日本人と数組の白人カップルだが、よく聞くと日本語でない言葉の集いとなっている。彼らはどこで聞いたのか、ラグー・タリアテールとかいって世界中にSNSで情報を発信しているのだろう。上手に注文し、楽しそうにたべていた。
河口湖駅発の成田エクスプレス
さらに、驚いたことは、昼食後富士急行の河口湖駅に見覚えのある成田エクスプレスが入線していたことだ。駅員にただすと、こともなげに2時18分発の成田空港行きと答えた。今では、富士の麓から成田空港に乗り換え無しでゆけるのだ。
知らぬは日本人ばかりなりで、いつの間にか河口湖は東京を訪れる外人観光客のハブになっていた。よく見ると京都行バスまであり、富士山の御利益はたいへんなものだ。
横浜での、フランス語小ネタのようなことがここでもある。河口湖の隣は西湖だ。サイコと読むが、外人にサイコ(きちがい)というといささか問題だ、と心配していた。そんなとき、駅前のアナウンスでサイコを連呼しはじめた。サイコ・サイコ・サイコ行バスはNo3という感じだ。赤面しそうな場面だ。フランスで時事プレスや韓国で報知新聞というよりはいいかと思って近くにいた西洋人に聞いてみたところサイコではなく、The Best のほうで認識しているようであった。
富士河口湖。最高。西湖も最高。
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