2024年11月22日(金)

韓国の「読み方」

2017年2月28日

 東南アジア諸国では韓国企業が日本企業の手ごわいライバルになっており、日本人より多くの韓国人が東南アジアに住んでいることはビジネスの世界では常識だ。人的往来も活発で、ビジネスや観光でASEAN各国から韓国を昨年訪れた人は200万人以上。それに韓国は今や世界11位の経済力を持っている。そうした自信を持つ韓国社会では、東南アジアにおける北朝鮮の存在感など吹けば飛ぶようなものだという感覚が一般的なのだろう。リポートはそれを念頭に「そんなことないよ」と注意しているのだ。日本での認識も韓国と大差なさそうなので、このリポートを読むことは有益だ。

 東南アジアにおける北朝鮮の存在感は歴史的な文脈から説明される。

 現在の国力差を考えると信じがたいが、韓国と北朝鮮は1960年代、70年代には「どちらが正統性のある朝鮮半島国家なのか」をかけた外交合戦を展開した。1970年代半ばまで北朝鮮の方が韓国より経済力が強かったことが背景にあろう。リポートは、この頃の東南アジアにおける北朝鮮外交について「韓国に比べて、はるかに活発で強力だった」と評価し、この時期に形成された人的ネットワークが現在も残っていると指摘する。

 どちらも既に故人ではあるが、カンボジアのシアヌーク国王と北朝鮮の金日成主席の親交は有名だ。クーデターで一時国外追放されるなど激動の時代を生きたシアヌークは平壌に長期滞在し、自国内での身辺警護も北朝鮮の要員に任せた。カンボジアは現在も北朝鮮と深いつながりを維持している。

 インドネシアの初代大統領スカルノと金日成も親密だった。スカルノの長女であるメガワティ氏も大統領在任中の2002年に北朝鮮を訪問して金正日総書記(当時)と会談し、そのまま専用機で平壌から直接ソウルに向かうという南北連続訪問をしている。

非同盟運動からの歴史的つながりも

 リポートでもう一つ指摘されているのが非同盟運動からのつながりである。スカルノ政権下のインドネシアをはじめとする東南アジア諸国は非同盟運動に積極的に参加し、北朝鮮の金日成政権と良好な関係を築くことになった。金日成政権が指導理念である「主体思想」を打ち出したのも、1965年に金日成がインドネシアを訪問した際の演説とされている。金日成はインドネシアのアリ・アラハム社会科学院での演説で「思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛」が主体思想だと表明したのである。

 リポートは、非同盟運動の原則である内政不干渉が東南アジア諸国の外交で重視されている点も挙げる。この点はリポートの指摘する非同盟との関連だけでなく、政治形態や経済発展の度合いがバラバラな域内国をまとめるために内政不干渉を重視するASEANの事情も大きいだろう。ともかく内政不干渉という東南アジア諸国の外交原則が北朝鮮にとって心地よい環境だったということだ。


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