連日35度以上の猛暑が続く今年の日本列島。夏の暑さを乗り切る食べ物として好まれてきたウナギの消費も伸びているようだ。
ただ、蒲焼きになっているこのウナギ、その取引は様々な闇が覆う。日本の水産物は一般的にトレーサビリティが法的に担保されているものは多くないのが実情だが、ウナギほど問題まみれの水産物も珍しい。まずは「中国産」と言われる輸入品の実情を見ていきたい。
ニホンウナギは4割以下・中国産のウナギ蒲焼き
店頭に並ぶウナギの蒲焼きを見ると、国産のものと、それより割安な中国産のものが並んでいることが分かる。国産の場合は静岡産や鹿児島産といった県レベルでの産地を示す表示がされている一方、筆者の周辺のスーパーを見る限り、中国産の場合は「ウナギ(中国産)」などの表示がされているものがほとんどだ。
ウナギ科ウナギ属に属する16種のうち、日本の在来種として生息しているのはニホンウナギとオオウナギ。このうち蒲焼きになるのはニホンウナギの方である。中国についても、蒲焼きとなって日本に送られるウナギのうち、在来種はニホンウナギにとどまる。
ところが、中国から提出された報告によると、中国の2021年における養殖ウナギのうち、在来種のニホンウナギ生産量は全体の約3割強(2万8000トン)で、残りの大半の66%は(6万1000トン)は、アメリカ大陸由来のアメリカウナギとなっている。
中央大学の白石広美研究員らの著した学術論文(Shiraishi, Han, and Kaifu, 2025)でも、日本の小売店で販売されていた合計133点のウナギ蒲焼をDNA分析したところ、中国産ウナギ蒲焼き82点のうち、約6割の49点がアメリカウナギであったという結果が示されている。つまり、スーパーで売っている「ウナギ(中国産)」の蒲焼きの6割以上はニホンウナギではなく、アメリカウナギということになる。

