2025年12月5日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2025年8月18日

 秋の味覚サンマ。筆者は、社会人になって宮城県気仙沼市ではじめて食べた生サンマの刺身のおいしさをいまだに忘れられません。その生サンマの刺身を味わう機会はめっきり減ってしまいました。

秋の味覚サンマ(筆者提供)

 主な理由は下図のように漁場が遠くなってしまったためです。水揚げまで日にちがかかり、鮮度面で刺身に向きにくくなってしまいました。

 図の青線が排他的経済水域(EEZ)です。2024年の漁獲量は、全体のサンマ漁獲量(15.5万トン)の内、93%が青線のEEZ外側の公海漁場でした。

 日本の水揚げ港から片道3日前後離れた漁場から持ち帰っている近年と、サンマが大漁だった上図の07年のころのように、漁獲後その日のうちに北海道や三陸などに水揚げしたころと比べ、物理的に鮮度の差に差が出てしまいます。サンマ・マイワシ・サバなどの青魚は、もともと鮮度が落ちやすい魚なのです。

 8月10日に大型漁船によるサンマ漁が始まりした。幸先よく公海で漁獲された173トンが、北海道の花咲港で水揚げされました。サイズは130~140グラムと昨年の100グラム程度のサンマと違い比較的大きなサンマです。

 昨年(24年)の水揚げ量は3.9万トンと一昨年(23年)の2.6万トンに比べて漁獲量は5割増えました。ただし、増えたといっても14年以前には年間20万~30万トン漁獲していた数量と比較すると、かなり少ないことに変わりありません。

 事前の資源調査では昨年(24年)より来遊量が多くサイズも大きいというものなので、漁模様は悪くないかも知れません。また昨年は公海での漁獲量が漁獲枠に達して漁期中にはじめて漁が止まりました。資源管理が機能してその時に獲られなかったサンマが産卵したり、来遊してきたりしている可能性もあります。このこと自体はとても良いことです。

 ただし、日本のEEZを含めた全体の漁獲枠が、科学者が算出した枠より大幅に大きすぎることに変わりがありません。このため短期的によく見えても中長期的な視点では、それが大きな懸念事項として残っています。

 おいしさの指標である脂ののり具合が今一つで、安くておいしい大衆魚から、細くて高い高級魚に変わってしまったサンマは今後どうなっていくのでしょうか?


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