マイワシの資源量が心配される根拠
マイワシが大漁には浜に打ち上げられて処理に困っているなどの報道を見ると、マイワシがたくさんいるように思えます。マイワシの資源は、数年~数十年単位で大きく変動する特徴があります。
主要漁場の1つである今年(25年)6月16日~7月31日の北海道沖での漁獲量は昨年同期比46%減の約5万トンに留まりました。毎年のことですが、漁獲しているサイズは主に50グラム前後の食用には適さない小さなマイワシです。主要水揚げ港である釧路港では水揚げされたマイワシの実に99%が丸のままフィッシュミールや養殖用エサに向けられています(24年・農水省・漁港別品目別用途別出荷量)。
同漁場の近辺ではロシア漁船も大量にマイワシを毎年漁獲していましたが、先月(7月)は群れが薄く漁を中断しているようで、船舶自動識別機装置(AIS)で見ても操業していない様子と、漁業者の方から情報が届いています。
北海道沖のマイワシ漁が落ち込んできている一方で、銚子沖の漁場は逆に先月(7月)までは豊漁でした。 こういう情報が入り混じって報道されるとよく分からなくしまいます。銚子~北海道・道東沖で漁獲されるマイワシは回遊魚で同じ資源(マイワシ太平洋系群)です。
重要なのは、どこで大漁とか不漁とかではありません。その資源全体の資源量を見て、持続可能な漁業か確認していくことが不可欠なのです。そして資源量が減ってきたら、科学的根拠に基づいて「予防的アプローチ」を実施して漁獲量を制限して回復を待つことです。
みなさんにおなじみのノルウェー産(カラフト)シシャモは、今年(25年)資源量が減って来たので禁漁を実施しました。漁獲しようと思えば10万トン程度は余裕で漁獲できますが、将来のことを考えて予防処置を取って回復を待ちます。
日本の漁業では、サンマ・サバ・マイワシをはじめ予防的アプローチはなく、実質的にできるだけ獲れる漁業になっています。これは漁業を成長産業にしている北欧・北米・オセアニアなどと異なり、数量管理ではなく、漁期や漁具などを制限する手法を取って来たからです。後者に意味がないわけではないのですが、効果があるのは前者です。
理由は科学的根拠に基づく数量管理(漁獲枠・個別割当制度)を行えば、漁期(価値が高い時期に獲る)や漁具(漁獲量が限られるので小さな魚は漁業者自ら獲らないようにする)など、漁業者が漁獲量ではなく、いかにして水揚げ金額を考えるようになり、結果として資源管理が機能するようになるのです。
国は「国際的に見て遜色のない資源管理システム導入」を目指しています。ところが、資源管理に関する国際的な「常識」が日本ではあまり理解されていません。サンマが低空飛行を続け、サバも獲れないもしくは小型を成長乱獲(24年は58%が非食用・農水省)、マイワシも成長乱獲で丸ごとフィッシュミールとなり、漁獲全体の81%が非食用(同)では資源の無駄遣いだけではく、社会に暗い影を落としてしまうことになります。
こういった日本の将来にとって非常に重要な情報が知られていません。そこで広く社会に伝わって、世論が変わるまでこの発信を続けていく次第です。
