密漁蔓延、ハイチギャングの資金源にも
現在ウナギの稚魚をゼロから人工的に育てる技術は確立していないことから、中国はアメリカウナギの稚魚を養殖用として輸入していると考えられる。中国政府は、2011/12年漁期(11年11月~12年10月)から2023/24年漁期にかけて、ニホンウナギの稚魚については養殖用種苗として輸入していないとする一方、「ニホンウナギ以外の種のウナギ」については稚魚14~39.5トン輸入したと報告している。
養殖用のウナギ稚魚のアジアの中継地点となっているのは香港である。その統計を見てみると、17年から23年にかけて、6.3トンから25トンが香港を通じて中国に再輸出されている。
香港にはウナギ稚魚が遡る河川はなく、これらはほぼ全て他国から香港に輸入されたものである。では、この香港のウナギ稚魚はそもそもどこからきているのか。
先ほどの香港政府統計によると、ヨーロッパウナギの供給先と思料されるアメリカ大陸からとしては、カナダ、米国、ハイチを原産地と報告されたものがほとんどを占め、特にハイチが22年と23年に突出して多いことがわかる。
カナダに関しては、23年までのウナギ稚魚の許可採捕量は9.96トンに過ぎない。密漁の蔓延を受けカナダ政府は24年3月に同年の稚ウナギ採捕許可を取りやめる決定を下している。にもかかわらず、正規の許可採捕量の2~4倍の量が香港1地域に輸出されていることになる。
実は以前より、本来はカリブ海・中央アメリカ諸国で採捕されたウナギ稚魚の一部が「カナダ原産」と偽ってカナダから東アジア諸国に再輸出されていることが指摘されている(Gollock et al., 2018, p. 47)。相当量のウナギ稚魚は、カナダで違法に採捕され香港に輸入されたか、あるいはもともとはカリブ・中央アメリカ諸国原産だがカナダ産と偽って香港に輸入された可能性が少なくない。
