「デコイ」と化した東アジアの自主規制
国際社会には、定期的に会合が開催されているものの、実質的に何の実効性も伴っていない、単なるお喋りの場と化している政府間のフォーラムや会議体、国際機関が存在する場合がある。例えば国連には「国連森林フォーラム(UNFF)」という会議体が存在しており、その淵源は92年の地球サミットに辿ることができるが、何一つ実効的な合意を打ち出したことがないと批判されることがある。こうした立場からは、むしろ逆に法的拘束力のある国際合意を阻害しているとも言い得る。
ロシアのウクライナ侵攻でもそうだが、戦場において敵方の攻撃を欺くための囮の標的=デコイを設置することがある。例えば、敵方のミサイルやドローン攻撃の「無駄打ち」を誘発するため、目立つように戦場に設置した張りぼての戦車や装甲車などが「デコイ」と呼ばれる。これをもじり、有効な取組を却って阻害するだけで無意味あるいはむしろ有害な「張りぼて」の国際フォーラムや機関、制度のことを国際政治学でも「デコイ」あるいは「空の制度(empty institution)」などと呼ぶことがある(Dimitrov, 2019)。ウナギの4カ国非公式協議も、有効な規制をなし得ない「デコイ」と呼べはしないだろうか。
