2025年12月5日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2025年9月1日

 22年に香港への稚ウナギ輸出首位となったハイチは、21年に大統領が武装グループに暗殺され、現在首都の大部分がギャングに支配されるなど無政府状態が続いている。こうした中、25年1月に開催された国連安全保障理事会で、ハイチの犯罪者集団がウナギの密売で利益を得、ウナギ産業が麻薬取引でのマネーロンダリングとも繋がっていると懸念する報告が国連薬物犯罪事務所(UNODC)よりなされている。

 中国からの養殖ウナギの過半を占めるアメリカウナギは、その取引において大きな闇が存在していると言わざるを得ない。

日本も加担する「捕り切れない」規制

 次にニホンウナギの問題に目を転じてみよう。国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、23年時点での世界のニホンウナギ生産量のトップ4(中国、日本、韓国、台湾)はいずれも東アジア諸国である。これら4者は14年、養殖池に池入れするニホンウナギ稚魚の数量を直近の数量から20%削減し、異種ウナギについては直近3カ年の水準より増やさないための措置を取る旨の共同声明を出している

 以降もこれら4者は「ウナギの国際的資源保護・管理に関する非公式協議(以下「非公式協議」と略)」と呼ばれる会議を年に1度開催し、これが日本を含めたウナギに関する東アジア地域における国際的な唯一の規制枠組みとなっている。

 ところが、この枠組みはウナギの保全に実効的なものとはほど遠い。そもそも池入れ上限設定の基準年とされた13年漁期の稚ウナギ採捕量は他の年と比較すると突出して多い。異例なほどに豊漁と報告された年を基準年とした結果、「捕り切れない量」が上限となり、ほとんど意味のないものとなっていたのである。

 こうした中、今年は特に中国で稚ウナギが豊漁に恵まれた。25年6月に開催された日中のウナギ取引業者の意見交換会の席上、中国側から合計85トンのニホンウナギ稚魚の池入れがあったと報告されている。

 ところが、「非公式協議」で合意された中国の池入れ上限は36トンで、85トンという数字はこれを遥かに上回っている。業界団体「日本シラスウナギ取扱者協議会」の代表も、「4カ国協議が実質的に破綻したということにもなりかね」ない、との懸念を表明していた(日本養殖新聞2025年6月15日)。

データ出典:ウナギの国際的資源保護・管理に係る第18回非公式協議(2025)「共同プレスリリース」7頁(2011/12~2023/24池入れ量)。2024/25年漁期池入れ量については日本養殖新聞2025年6月15日付。 写真を拡大

 ちょうど25年6月、年に一度の「非公式協議」が開催されている。しかし中国は昨年とは異なり、「公式統計が出るのは7月になる」として池入れ数量の公にしなかった(水産経済新聞2025年6月25日)。日本側などがこの問題を提起したなどとの報道や水産庁からの発表は全くなされておらず(そもそもこの非公式協議はマスコミなどには一切非公開である)、「非公式協議」のほぼ唯一の規制枠組みである稚ウナギ池入れ上限の超過について、見過ごされたと言って良い。これでは、自主規制には何の実効性も伴っていない。


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