いま、スポーツに限らず政治、経済、芸能とあらゆるジャンルの中で日本を最も沸かせている〝ガチンコバトル〟と言えば、「小池百合子vs石原慎太郎・新旧東京都知事対決」だろう。都民の食の安全にかかわる市場移転問題が争点だけに無責任に面白がるわけにもいかないが、ともに数々の修羅場をくぐってきた老獪な政治家同士の激突は下手な格闘技以上に迫力たっぷり。7日から開幕した3年に一度の野球世界一決定戦WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が霞んでしまわないようにと、余計な心配までしてしまう。
小池現都知事と石原元都知事の間で争点になっている築地から豊洲への市場移転問題、実はプロ野球界にも大きな影響を及ぼす可能性を秘めていた。石原氏は都知事時代、市場移転と平行して東京オリンピックの2016年開催を計画、公に表明して大いに都民の期待をあおった。ここから先はあくまでも水面下でささやかれていた情報だが、五輪誘致までに市場の豊洲移転が完了したら、築地の市場跡地にオリンピック用の新球場を建設、五輪のあとにはこの球場が巨人の新本拠地球場となる、という青写真が描かれていたと聞く。
巨人は当時から、東京ドームに代わる自前の新球場を持とうという計画を練っていた。1988年の開業時には最新鋭の設備を誇った日本最初の室内球場も老朽化が著しく、12球団の本拠地で一番狭いと言われ、最も本塁打が出やすいと投手たちから悪評を買うほどに評価が急落。加えて、株式会社東京ドームという別会社が所有しているため、年間約25億円と言われる高額なレンタル料も払わなければならない。そのころの内情を、ある球団関係者がこう明かしている。
「当時、どこにどんなタイプの球場をつくったらいいか、球団内部で調査、研究していたのは事実ですよ。東京ドームはレンタル料が高い上、物販収入も思うように入ってこないというネックがある。例えば、選手の名前を使ったキャラクター弁当一つ取っても、ウチではなかなかつくれなかった。球団や選手のロイヤルティーのほか、ドームに収めるロイヤルティーを価格に乗せたり、そのせいで他球場よりも値段が高くなったり、いろいろな問題をクリアするのに手間取りましたから。でも、自前の球場が持てれば商品開発もスムーズにいく。他球団に後れを取ることなく、たくさん魅力的なグッズを売り出せる」