2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2017年4月5日

 大学生になり、上京してくる方たち全員に、おめでとう。明るいキャンパスライフのまま頑張れるか、それともバイト、バイトに明け暮れ、ついには勉強しないことになるのか、とかは置いておくとして、少なくとも入学式の時は、ウキウキした感じだと思う。受験と言う名の人生の難関を一つくぐり抜けたわけなので、この入学式ばかりは、父、母も一緒にと考えている人も多いと思う。

武道館(iStock)

 この時期、入学式ラッシュの建物がある。北の丸にある日本武道館だ。2016年の実績でも、4月2日の東京電機大学を最初に、法政大学、帝京グループ、専修大学、東洋大学、明治大学、日本大学、東京理科大学。1日置いて日本工学院専門学校。とりは4月12日の東京大学で、このラッシュが終わる。東大が、4月12日こだわるのは、4月12日が東大の創立記念日だからだそうだ。一期生が入学した日でもあるので、これは新入生にとっても意義深いかもしれない。

終わったら、3時間半の両親孝行は?

 両親と仲が良い、悪いはあるとしても、この入学式で両親と一緒に来た人は、両親が郷里に帰るまでのしばしの時間、一緒に東京見物はいかがだろうか?

 私がお勧めするのは、東京への挨拶という意味で、神社仏閣へのお参り、そしてなかなか食べる機会がないだろう江戸食を一緒に食べることを勧めたい。一風変わっているかも知れないが、入学式という儀式のついでに、東京へきちんと挨拶してしまおうという考え方だ。

その前に簡単なガイドを!

■東京の神社仏閣

 東京の神社の双璧は、江戸の祟り神、平将門を祭り、江戸の総鎮守と称された神田明神。そして徳川家の産土神とされた山王権現(日枝神社)。この2つの神社の祭りは「天下祭り」と称され、その祭り行列は江戸城で将軍様も見物したとか。

 他にも有名どころはいろいろあるが、この2つは外したくないところ。そして、お寺の方は、浅草の観音様こと、「浅草寺」。この観音様は、推古天皇36年(628年)、宮戸川(隅田川)で漁をしていた檜前浜成・竹成兄弟の網にかかったそうなので、相当に古い。この聖観音菩薩像は、金色で御身丈1寸8分、現在の長さでは5.5cm。非公開秘仏で、見ることはできない。ちなみに『吾妻鏡』には「鎌倉の鶴岡八幡宮造営に際し、浅草から宮大工を呼び寄せた」とあるので、ここは由緒正しき古刹であることがわかる。

 今回は、山王権現を入れたコースを紹介していないが、この3社寺は、東京都民として是非お参りして欲しい。

■東京の料理

 意外に思われる人も多いと思うが、江戸の味覚は「三白」「五白」に集約されるといわれている。白米・豆腐・大根・鯛(白身魚)・白魚。要するに、淡泊な微妙な味わいを好んだわけだ。江戸っ子らしい言い方をすると「さっぱり」。江戸っ子の気性にも合う。

 江戸の四料理、寿司、天麩羅、鰻、蕎麦も実はその系統だ。『江戸っ子が、いまわの際にいったそうだ。「おめえたち、ざるそばのつゆは、たっぷり付けて食えよ」』という短い小咄があるが、そばはつゆをほとんど付けないでツルツルっと威勢のよい音を立てて食うのが粋とされている。これなども、蕎麦自体の香りを楽しみながら、つまり蕎麦という素材の微妙な香り、味を楽しみながら食べるためだったとすると、納得頂けると思う。

 そして地産地消。寿司は小鰭、白魚、穴子など、江戸湾、つまり江戸前の海で取れた魚で握ったもの。江戸時代、マグロは下魚。亡くなった私の父は「大トロなどは脂臭くて食えない」と言っていたが、昔の人は全員そう言ったかもしれない。

 江戸前の鰻は蒲焼き。背開きをし、白焼きしたあと蒸してから本焼きする事によって脂と泥臭さを抜き柔らかいものにするので、ギトギトはしない。

 これらを考慮した、お勧めは次の4コース。

浅草コース 〜定番観光で、東京が水の都であることを感じる〜

 まずは王道の浅草コース。武道館からは、九段下駅から東西線で日本橋駅、そこで銀座線に乗り換えて浅草駅へ。着いたら、まずは「雷門」を見よう。とにかくここは観光客だらけだが、親と写真を撮る機会など、なかなかないだろうから是非一枚。

 浅草には美味い店はいろいろある。天麩羅、蕎麦、どじょう鍋、すき焼き、等々。が、東京生活でマスターしておきたいのは『蕎麦』だ。江戸は昔から蕎麦食いのエリア。江戸の三大蕎麦は「砂場」「薮」「更級」。それぞれ使う蕎麦粉(挽く回数により同じ蕎麦の実からでも違う蕎麦粉になる)が違うので、蕎麦の色が違う。当然味も違う。是非、自分がどんなタイプが好きなのか、見極めて欲しい。

 食べ終わったら、雷門から、仲見世へ。外人が喜びそうなモノも多いが、日本人でもちょっと気になるモノも多い。「江戸趣味小玩具」などは典型だ。江戸時代は何度か、贅沢禁止令が出されたが、その時、玩具はサイズで取り締まられたとのこと。それへの対抗策が始まりなわけだが、その精巧さと美しさは息を呑むほど。しかもユーモアもたっぷり。本当に眼福の至り。また、小腹が空いているようであれば人形焼き。

水上バスから見たスカイツリー

 仲見世を抜けると本堂が見えてくる。本堂では、お賽銭を入れ、東京で上手く行くようにお祈りしよう。ポイントは、自分の氏名、住所を頭の中で言いながら、お願いすること。その方が、観音様も行動しやすいので、より霊験が現れやすくなるそうだ。

 さて帰りであるが、できたら使いたいのが水上バス。浅草は隅田川と目と鼻の先にあり、水上バスが使える。お勧めは浜離宮行き。理由は、その後の対応がし易いからだ。最終は15:40と少々早めであるが、乗る価値は十分ある。スカイツリーもかなり間近に見えるし、アサヒビールの金色のモニュメントも見える。何より、気持ちイイ。大阪もそうであるが、今ほど陸上交通が発達していなかった時代、舟での輸送は大変重要だった。このため運河が至る所に掘られた。その荷揚げ場所が河岸。魚河岸などの言葉が残っている。東京が実は水の都であったことが十分感じられる。

 浜離宮で降りたら、しばし歩き、JR新橋駅で東京駅に出ると、どこにでも帰れる。

 


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