シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」

2017年4月13日

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小林美希 (こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト

1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て2007年2月からフリーのジャーナリスト。「ルポ看護の質〜患者の命は守られるのか」「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)、(岩波新書)「ルポ保育崩壊」(岩波新書)と「ルポ母子家庭」(ちくま新書)「ルポ“正社員”の若者たち」(岩波書店)、「看護崩壊」(アスキー新書)、「ルポ職場流産」(岩波書店)、「ルポ産ませない社会」(河出書房新社)など

 これまで、女性が働き続けることについて経済的な理由が多かったが、その意識の変化も鮮明になっている。連合の「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」(2013年5月)」では、妊娠未経験者への質問で「働くことと子育て」について、「できるならば自分の希望として働きながら子育てをしたいと思う」が51.0%と、「経済的な理由で働きながら子育てをしなければいけないと思う」(27.4%)を大きく上回った。女性も当たり前のように、結婚しても出産しても働き続けたいと思うようになったことが、保育の需要を高めている。

 そして、製造業からサービス業へと産業構造が転換した今、雇用の受け皿となっている産業や職種が長時間労働や不規則な働き方を強いられがちで、保育の多様性も求められるようになってきた。

文部科学省「学校基本調査」(2016年度速報)の「卒業後の状況調査」から、就職先で多い産業を見てみよう。男性は、多い順に「卸売業・小売業」(17.0%)、「製造業」(14.8%)、「情報通信業」(10.5%)となっている。小売業では24時間オープンしている店舗もあり、情報通信業ではシステムエンジニアなど超長時間労働が目立つ業界でもある。女性のトップは「医療・福祉」(19.5%)、次いで「卸売業・小売業」(15.2%)、「金融業・保険業」(10.7%)、「教育・学習塾」(9.8%)となる。

「社員=親」ということが理解されない職場

 サービス業は土日祝日に働くことも多く、男女ともに夜間や早朝、休日のニーズの高い就業が増加しており、ワークライフバランスを図ることが難しい。冒頭の美知恵さんのように、医療・福祉は夜勤を伴うことがほとんどだ。

 育児介護休業法の「短時間勤務制度」では、子が3歳未満の社員は1日6時間労働が認められている。労働基準法でも、1日に30分を2回「育児時間」を取得できるはずだが、実際どうなのか。厚生労働省の「雇用均等基本調査」(2015年度)によれば、育児のための「短時間勤務制度」が「ある」企業は57.8%で、約4割の企業には制度すらない。制度があっても、最長利用可能期間が最も多いのが「3歳に達するまで」(59.7%)で「小学校就学の始期に達するまで」は19.8%に留まる。また、国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」(2015年実施)では、「育児時間制度・育児短時間勤務制度」を利用した女性は、わずか7.1%に留まる。

 子育て世代の雇用環境は厳しく、「社員=親」ということが理解されない職場では、ワークライフバランスを図ろうとすれば降格、左遷され、クビになりかねない。子どもとの時間をもちたくても、延長保育や土曜保育を使わなければならない状況だ。

 

  
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