2024年11月22日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2017年4月10日

 公共投資の効果が落ちていることは、その通りだと思います。しかし、それは公共投資が無駄だという事では有りません。景気が悪い時には公共投資が効きにくいので、より大量の公共投資を行なう必要があるのです。以下で、景気が悪い時には公共投資の効果が薄い理由をご説明しましょう。

公共投資には「乗数効果」がある……初心者向け解説

 公共投資が景気を回復させる効果は、必ずあります。公共投資そのものが失業者を雇うので、失業者は確実に減るからです。しかし、それだけではありません。雇われた元失業者が給料をもらって壊れていたテレビを買うとします。テレビメーカーは、テレビを増産するために失業者を雇います。

 テレビメーカーが増産のために新工場を建てれば、そのための鉄もセメントも機械設備も必要になりますから、これらの会社も増産のために元失業者を雇うかも知れません。そうでなくても、テレビメーカーに雇われた元失業者は居酒屋に飲みに行くとします。すると居酒屋が多忙になって……という具合に、当初の公共投資に雇われた元失業者の何倍もの人数が雇われることになるのです。こうしたことを乗数効果と呼びます。経済学者は雇われた人数ではなく、GDPの増加額を使いますが、考え方としては同じことです。

深刻な不況期は乗数効果が小さい

 深刻な不況期に公共投資を行なうとします。雇われた元失業者は、遠からず再び失業すると思って倹約するので、テレビを買う人は少ないです。テレビメーカーは、社内失業者(生産量が少ないので、社内でヒマにしている人)が大勢いるため、彼らの尻を叩くだけでテレビが増産出来ます。そこで、新しく失業者を雇うテレビ会社は稀です。工場についても、今の工場の稼働率が低いので、新しい工場を建てることは考えにくいでしょう。

 ろうそくの火はコップの水で消えますが、山火事はコップの水では消えません。「だから山火事には水が不要だ」というのではなく、「だから山火事には大量の水が必要だ」というべきでしょう。公共投資も同じことです。小規模な不況なら小規模な公共投資で回復するけれども、大規模な不況に際しては大規模ではなく「超大規模」な公共投資が必要なのです。


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