2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月19日

 ティラーソンが、北朝鮮の核開発を阻止しようとした過去20年のアプローチが失敗であったというのは正しい判断です。米国は1994年の枠組み合意をはじめとして、北朝鮮の核開発を阻止すべく、六か国協議などいくつもの働きかけを行ってきましたが、いずれも成果を上げられませんでした。

 北朝鮮に一番影響力を持っているのは中国であり、米国は機会あるごとに中国が北朝鮮に圧力を加えて核開発を中止させるよう要請しましたが、中国はこれに応じませんでした。中国が北朝鮮に対して持っている梃子は、食料、石油の供給を大幅に減らすか、中断することですが、中国はその結果北朝鮮体制が崩壊して、国境線まで親米政権が拡大すること、また大量の難民が中国に押し寄せるおそれからこれを望まず、この梃子を使いたがりません。逆にそれを知っている北朝鮮が、いわば中国に対して梃子を持っているのが実情です。

 それでは、ティラーソン、あるいはトランプ政権はいかなる対北朝鮮政策を考えているのでしょうか。

 ティラーソンは韓国訪問中、戦略的忍耐の時代は終わった、あらゆる選択肢が排除されない、と述べました。ただ、いかなる選択肢が北朝鮮の核開発に歯止めをかけられるかは明らかではありません。

 社説は、北朝鮮とビジネスをしている中国企業を米国の金融システムから追放することを選択肢の一つに挙げています。しかし、中国が北朝鮮に厳しい経済制裁を課すことは考えられません。社説はまた、北朝鮮による次のミサイル発射を迎撃するという選択肢があると言っています。もし迎撃すれば北朝鮮は黙っていないと思われ、何らかの報復措置を取る危険があります。他方、迎撃したとしても、北朝鮮が核、ミサイルの開発を止めるかどうか疑問が残ります。

 北朝鮮の核開発を止めさせることは、極めて重要で困難な課題です。その手段によっては、北朝鮮が報復措置を取り、事態がエスカレートする危険があります。基本的には北朝鮮に対して抑止が効くかどうかという問題です。北朝鮮に対する新しい選択肢は、朝鮮半島、東アジア、ひいては世界の安定の大きな波乱要因となり得ます。日本としても重大な関心を持つべき問題で、今後トランプ政権がどのような検討をするのか細心の注意を払ってフォローするとともに、直接の利害関係国として、米国と密接な協議を行うべきです。

  
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