世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月28日

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 この論説は、ロシアの中東での動きをバランスよく描写しています。

 現在、ロシアは中東の多くの地域で活発な軍事、外交活動を展開していますが、ロシアの国力不足を認識し、中東での覇権というような大きな目的を追求しているのではない、との指摘は的を射ていると思われます。

 ロシアの中東政策は、大きな目的を実現するために諸政策を有機的に結合したものというより、米国に対抗して米国の政策、特にレジーム・チェンジを邪魔し、存在感を示すこと、個々の国との懸案(例えばサウジとの石油に関連した協力)に取り組むことであって、それ以上のものではないと思われます。

 石油ではサウジと、シリアではイランと協力していますが、サウジ・イラン間の対立が深まる中、サウジ、イラン双方に良い顔をした外交は運営が難しいです。エルドアンとの友好とYPGとの良い関係は両立しがたいものです。またイスラエルとの友好とシリアでのヒズボラ、アサドとの協力関係も薄氷の上に乗ったような政策展開です。うまく行かなくなる可能性が大きいです。

後は野となれ山となれ

 この論説は、ブッシュのイラク戦争のころ、イラクを壊した後、その再建は米国の責任になると言われたことを思い出して、ロシアも戦後の地域の再建という難問に遭遇すると示唆していますが、ロシアは壊したら再建の責任を負うというような考え方はしません。後は野となれ山となれという態度もあり得ます。旧ソ連のアフガン介入とそこからの撤退のやり方がロシアのやり方をよく表しています。再建の義務感に囚われ、泥沼に入るようなことはないでしょう。

 プーチンの中東介入は、彼の内政上の人気維持に最も大きな動機があります。ロシアは経済的に弱っていますが、国際場裏では大きな役割を果たし、米国との対等の当事者であることを示して、ロシア人の愛国心に訴えることが強い指導者としてのプーチン支持につながると考えている面が強いです。しかし、経済的に疲弊したロシアは、実力以上の介入に乗り出している嫌いがあります。

 なおロシアのソチからアレッポまではパリからベルリンまでと同じ距離で、ロシアにとり中東は近いとの指摘が論説にありますが、これはその通りです。またロシアがイスラム過激派のテロの脅威を警戒しているのもその通りです。ロシアは欧州主要国中、人口比率上、最も多くのイスラム教徒を抱えています。

  
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