ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年7月19日

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  でも、この制約こそが折り紙の特徴でもあって面白い。展開図を考えるには、紙がどのような重なり順になるのかを推定しなくてはなりません。そこで、構成面同士がどんなふうに干渉しあうかを計算で導きだします。制約が多いほど、その解を導く数学は複雑になってきます。展開図には無限のパターンがありますが、その中で、見て美しくかつ実際に作れるというものは限られてきます。

若田光一宇宙飛行士がロボットアームで回収したことで知られる「宇宙実験・観測フリーフライヤー」(SFU, Space Flyer Unit)。 このパネルの展開には、ミウラ折りと呼ばれる折り方が生かされていた。金属のような剛体をどのように折り畳むのかは、工学分野の関心事項の1つだ。(イラスト:JAXA)

●そうした“折り”の知見を学問との関わりでみると、どんなものがあるんでしょうか?

——人工衛星の太陽電池パネルや車のエアバッグの設計、それ以外にも折りたたみ可能な構造物の設計には“折り”の知識が必要になります。図形の知識を教えるための教育の場面での活用なども含めると、折り紙を対象とした研究というのはけっこうあります。

 折り紙に関して、いま私が興味を持っているのは、一つには折り紙の設計技法。目的の形を1枚の紙で作るにはどうしたらいいかという問題です。専門用語になりますが、これまでにはボックスプリーツを用いた設計、サークルパッキングと呼ばれる技法などが考案されています。

 それから、工学分野で有用な剛体折り紙。折り紙を鉄板で作れるかどうかということです。紙はねじれますが、硬い鉄板はねじれませんね。では鉄板で作れる折り紙の条件はなにか。実際に構造物を作るときには鉄やガラスのようにねじれないものが多い。有名なミウラ折りは剛体折り紙です。工学的な分野で重要になる研究です。

 さらに曲面折り紙は、純粋に数学的な話。曲面をもった折り紙はどんな形ができてどんな形ができないのか。そしてまた、アートとして造形の美しさを追求することも多くの方によって行われています。

複雑なものほど、折りにくい

●うーん、折りの科学って深いんですね。物理学的制約を、どうやって克服するかがポイントですね。

——そうですね。紙の厚さもそうです。コンピュータ上での展開図設計は、紙の厚さを考えないという前提で行うんですが、実際にその展開図から立体を作る場合は、紙の厚さが無視できなくなってきます。たとえば、段ボールを使って何か作ろうと思ったら、その厚みの分を考慮しないとうまく作れませんよね。折り紙設計のときにもその考えが必要かなぁと。いまそういうことが気になっていますね。

 あとは作りやすさ。いっぺんにたくさんの場所を折らなくてはならないような展開図だと、こっちを押さえてあっちを押さえて、とやって作らないといけないので、手が二つしかない人間には作るのが難しいんです。

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