2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月19日

農業、農村、農民の「三農問題」

 中国政府の大きな経済政策の中で個々の事案を判断しないと結論を間違えます。中国の都市建設計画は、複数の目的を持ちます。農業、農村、農民の「三農問題」を根本的に解決するためには、農業の生産性を飛躍的に高める必要があります。それは大量の農民の離農を意味し、その受け皿としての都市建設が計画されました。同時にそれが最大の格差問題といわれた都市と農村との格差を縮小させることにもつながります。さらに都市居住者の増加は消費の増大も意味し、経済発展のエンジンを投資から消費に切り替える経済の構造改革にも資することになります。既存の大都市への人口流入圧力の軽減にも役立ちます。

 その結果、中国全土で都市建設が進みました。まったく新しい都市を造る場合もあれば、既存の中小都市を合併させる場合もあります。就業の多くを第三次産業が担うにしても、核となる産業がないと都市は成立しません。それが難題だと思っていましたが、インフラ整備が急速に進んだ結果、多くの都市が上海や広東(深圳)などの巨大経済圏と結びつけられ、核となる産業が出来上がってきたようです。巨大経済圏を持たない華北地方にもそれを作ろうというのが、習近平が提唱した河北省「雄安新区」の基本的発想です。中国全土でインフラは引き続き整備され、経済圏はさらに拡大し続けるでしょう。

 上記エコノミスト誌が描いたように、367万の人口を持つ安徽省蕪湖市にも、その波が及んでいるということです。不動産投資というとすぐにバブル崩壊を想像しますが、実体はもっと複雑です。やはり一定の実需は依然としてありますし、中央政府の地価対策も一定の効果を上げています。それにしてもこれだけの乱高下を続ける不動産市場に中国人はよく付き合っていると思います。これも「中国スタンダード」のなせる技なのでしょう。

  
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