2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2010年8月30日

 日本円でどんなに資産を持っていたところで、円が暴落して高インフレが発生すれば、その資産価値は大きく毀損してしまう。富裕層の多くは、すでに多額の資産を海外に移しているとも言われ、日本で財政破綻が起きた場合、海外に移すほどの資産を持たない人との経済格差はさらに広がることが予想される。しかし、私たち国民がこぞって海外に資産を移すことは、国債を国内で消化できなくなる事態、つまり財政破綻の引き金を自ら引く行為であることも同時に自覚しておくべきだ。

 では、財政破綻が起きないことを想定した場合、どのような資産運用の方法が効果的なのだろう。

 「名目GDPで見ると、日本経済は1991年~1992年と同じ水準にあることがわかります。このため、国内株式投信を長期で保有しても資産価値は増えてくれなかったわけです。資産運用はドライブに例えるとわかりやすく、まず目的地とそこにたどり着くまでの所要時間(=老後までにいくら必要か)を見積もってから、到達するためのコース(=投資方法)を選び、道路の環境(=世界経済の動向)に合わせてスピードを調節しながら目的地に向かいます。時にはパーキングに入って休む(=投資を控える)ことも必要でしょう」(同・浅井氏)

 そして、「日本の景気はアメリカの景気と連動しているため、アメリカの動向に注目することが大切」と、浅井氏は言う。アメリカの景気はおよそ4年ごとに波を打つ傾向があり、これは大統領選に連動したものであるとのこと。つまり、次の選挙の約1年半前の時期(選挙前年の春)になると、選挙での得票を狙い大規模な景気対策が打たれ、経済が回復していくのである。この繰り返しによって波を打つ景気に、自らの投資行動を合わせればよいということだ。

 また、リスクを回避する方法については、前述の分散投資に積立投資を組み合わせることで効果が上がるという。

 「年金関連法案が成立すれば、2012年1月から、確定拠出年金のマッチング拠出(企業年金に個人で積み増すこと)が可能になります。所得控除の対象にもなるので、これはおそらくブームになるでしょう」(同・浅井氏)

 もちろん、確定拠出年金をリスク性商品で運用した場合、財政破綻に伴う株価暴落等があれば大幅なマイナス運用に陥る可能性もある。だがこれからの時代、何もせずにただ預金を増やしていくだけでは、資産が目減りしていくのを黙って見過ごすことになりかねないのも確かである。

中島厚志(なかじま・あつし)氏
みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミスト。1952年東京都生まれ。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長などを経て現職。テレビ東京系「ワールド・ビジネス・サテライト」でコメンテータを務める。著書に『世界経済 連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

浅井秀一(あさい・しゅういち)氏
有限会社ストックアンドフロー代表取締役。1964年愛知県生まれ。相続と法人の清算をきっかけに、早稲田大学在学中の昭和63年に学生初のFP資格取得者となる。卒業後、独立系FP会社勤務を経て、現在に至る。同社セミナー・講演活動、新聞・雑誌の連載、執筆活動などFP業界の第一線で活躍中。おもな著書に、『佐藤江梨子と浅井秀一のいちばんやさしいマネープラン』(日本経済新聞社)、『図解:わかる住宅ローン』(新星出版)など。

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