2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月9日

 今回の米ロ首脳会談はこれまでの米ソ、米ロ首脳会談とは大きく異なる奇妙な首脳会談でした。この論説はその背景を良く描写しています。印象操作を重視する両首脳間の会談でした。

 議題の準備もなされない米ロ首脳会談と言うのは稀です。事前準備をしてこそ、外交上の成果が上がります。米ロ双方の利害の調整など、外交上の成果はほとんどありませんでした。

 首脳同士の相性が良く、会談時間も長かったから、個人的には、いい関係が築けたと言えますが、それで今後の米ロ関係がどんどん良くなると言うことでもないでしょう。米ロ間には、利害の対立、そのうえに相互の不信があり、その調整はそう簡単ではありません。

 ロシアの2016年米大統領選挙への介入については、トランプが提起し、プーチンが事実を否定しました。両者はこの問題を乗り越えて「前進する時だ」としたようです。しかし、7月10日付のニューヨーク・タイムズ紙は、社説でリンゼイ・グラハム上院議員(共和党)やアダム・シフ下院議員(民主党)など共和・民主両党からこれの批判が出ていると指摘しています。7月10日付のワシントン・ポスト紙の社説では、トランプが「先に進み、ロシアと建設的に協力していく」と明言したことについて、ロシアを信頼するのは危険で、ナイーブであり、ロシアは選挙介入について代償を払わされるべしと共和党、民主党ともにトランプの姿勢を批判しているとしています。

 「ロシアゲート」問題が米ロ関係の躓きの石になりうる状況は何ら変わっていません。特にトランプの長男がロシア側と接触した問題はこれまでの説明が虚偽であったことを証明することにつながりうるもので深刻です。

 7月7日のワシントン・ポスト紙は、トランプが隣国を侵略し、民主国家の選挙に介入し、国内の反対者やジャーナリストの暗殺を指揮するプーチンに「お会い出来て光栄」と述べたことを批判しています。

 米国内の対ロ不信は根強く、トランプが米ロ関係を改善しようとしても、国内的な抵抗が出てくることをこれは示しています。

 プーチンは米国を中心とする西側の団結を崩すことを主眼として政策展開をしています。国内的には、これまでロシアの苦境は制裁など西側の政策のせいであるとしてきたこともあり、こちらもそう簡単に方向転換できません。

 そういうことなので、今回の首脳会談が米ロ関係の今後にどの程度の影響を与えるかについては、あまり大きな影響はないと考えられます。

  
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