海野素央の Love Trumps Hate

2017年9月2日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

北朝鮮問題に動きが鈍いトランプ

 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、トランプ大統領は、8月29日の北朝鮮の弾道ミサイル発射から約14時間後に声明を発表しています。その中で同大統領は、「すべての選択肢が(交渉の)テーブルの上にある」と述べました。この聞き慣れたメッセージは、ほとんど効果を上げていないことは確かです。同大統領は良い選択肢が見つからないのです。北朝鮮のパトロンである中国依存の外交交渉、石油禁輸のない経済制裁及び相手国からの反撃を受ける可能性が高い軍事行動など、すべての選択肢の中からどれをとっても、効果性に欠けるかリスクが高いのです。

 7月4日、北朝鮮は1回目のICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射しました。ミサイルがICBMと確認されても、トランプ大統領はホワイトハウスで緊急記者会見を開くなどの行動を起こしていません。では、同月28日に発射した2回目のICBMまでの間に、同大統領は何に対して時間とエネルギーを費やしていたのでしょうか。

 北朝鮮問題が最優先課題であるならば、トランプ大統領は中国が北朝鮮に圧力をかけるように、そこに自身のエネルギーを注ぐべきでした。ところが、同大統領は米議会が休会に入る前にオバマ前大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)に対する代替法案を可決させようと、身内の与党共和党上院議員に「最大限の圧力」を加えていたのです。さらに、ジェフ・セッションズ司法長官を解任させるために、同長官にも圧力をかけていました。同大統領の圧力の矛先は、中国及び北朝鮮ではなかったのです。そこから、北朝鮮問題に対する同大統領の本気度が見えてこないのです。

 米国東部時間で8月28日夕方に北朝鮮は、日本上空を通過する弾道ミサイルを発射しました。ミサイル発射以来、同月30日になってトランプ大統領は、初めて北朝鮮に関して自身のツイッターに「対話は解決策ではない」と投稿しました。ミサイル発射から投稿までの「タイムラグ」からも、同大統領が北朝鮮問題を本当に最優先課題に置いているのか疑わざるを得ないのです。

 

  
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