8月18日付のワシントンポスト紙及びニューヨーク・タイムズ紙は、バノン戦略担当上級顧問の辞任について、社説を掲載しています。その概要は、次の通りです。
WP:「バノンの離任はすべてを正すわけではないが、助けにはなる」
バノンの離任は肯定的シグナルなのか。答えは、イエスでもノーでもある。
少なくとも政策とその決定過程が、バノンがいなくなり改善されることが考えられる。しかし政府は何をどうすべきかについてのトランプの本能は良くない。バノンの役割はそれを強化したように思える。穏健で、安定をもたらす人がより大きな影響力を持つ希望があり、これはいいことである。
しかし、トランプは未だ大統領である。彼は相変わらず、ネオナチとそれに反対する人を道徳的に同じであるというような発言をするだろう。バノンはこういう傾向を奨励したかもしれないが、作り出したわけではない。バノンの離任は両院の共和党主流派にとり困惑の原因を取り去ったかもしれないが、彼らの道徳的ジレンマが終わるわけではない。
トランプがバノン辞任を受け入れたのは政策問題よりも、バノンが自分の伝記の出版に同意し、トランプからスポットライトを奪ったからだと言う。
バノン離任の利益は責任の在処を明確にするだろう。バノンは大統領の批判者を挑発し怒らせ続けた。同時に彼は彼らの注意をそらせた。「バノン大統領」は神話であった。1月20日以降、トップは同じトランプである。
NYT:「バノン退場」
トランプがバノンなど白人至上主義者を外そうとしているとすれば、良いことである。しかしそう評価するためには、トランプがオバマの出生地が米国ではないとの虚偽を広め、人種主義的情報を広めたことを忘れる必要がある。
もちろん、バノン離任は安堵させる。極右ブライトバートの連中を率いるバノンがホワイトハウスの頂点にいるなど、悪夢のようなものである。
しかしバノンはブライトバート会長に復帰した。彼は政治的に危険である。ホワイトハウス外で彼は自由に民族主義的保護主義に従わない人に反対勢力を結集できる。トランプに対しバノンが攻勢をかけるなら、当然の報いと言える。
バノンはトランプの反移民政策の立案者であった。しかし彼はトランプの行き過ぎへの反対者でもあった。コミーFBI長官の解任、セッションズ司法長官への批判、広報部長へのスカラムッチ起用に反対し、ケリー首席補佐官任命を支持した。北朝鮮への武力行使やアフガン増派に反対であった。
バノンは、対外貿易政策、海外での米軍介入、ワシントンでの金権政治に反対し、民族主義的感情をあおることを課題にしていた。ネオナチは「ピエロ」と発言した。
トランプが健康保険、中産階級減税、雇用拡大の公約から迷走する中、バノンは労働者層の必要にはっきりとした立場を維持することを主張した。離任し、彼は「経済民族主義」を自由に主張しうることになった。『悪魔の取引(バノン・トランプの共闘についての新しい本)』は、バノンが右翼の中だけで騒ぐのでは足りないことを自覚した最初の保守主義者の一人としている。バノンは、ブライトバートの拡声器と金持ちの極右に支持され、共和、民主両党にとり潜在的には危険な存在になった。しかしバノン更迭はいいことである。
出典:Washington Post ‘Bannon’s departure doesn’t fix everything — but it could help’ (August 18, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/bannon-is-out-but-that-doesnt-make-everything-all-better/2017/08/18/71336f8a-844e-11e7-b359-15a3617c767b_story.html?utm_term=.f74c9888ce8e
New York Times ‘Exit Steve Bannon’ (August 18, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/08/18/opinion/farewell-steve-bannon-trump.html