それでも温は持論を曲げなかった。8月27日の「全国依法行政工作会議」。「政治体制改革がなければ、経済体制やその他の領域の改革ないし現代化建設も成功しない」「手続き面の民主がなければ、実質的な民主はない」と踏み込んだ。「胡発言」後の9月11日になって講話全文が公表され、温の一貫した主張が浮き彫りになった形だ。
「おいしい果実も腐っていく」
危機感に満ちた党指導部
共産党幹部はこう言う。「毛沢東や鄧小平の時代は終わり、今の中国は集団指導体制です。絶対的権力を持たせる状況は制度上なくさなければならない。指導者はお互いに譲歩し合ったり、折り合いをつけたりして国を守っていくのです」
行き過ぎた経済改革の結果、社会には様々な矛盾やひずみが広がる。「共産党政権」という資本官僚体制の下、権力の枠内にいる者だけがおいしい果実にありつける歪んだ現実を是正し、「民」が政策決定に関与できる政治体制改革を推進しなければ、温家宝の言う通り、おいしい果実も腐っていくという危機感は指導部の共通認識であることは間違いない。
◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜
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