免疫療法は、現段階で効果が認められていないだけで、将来には効果が認められるかもしれない。それを提供して何が悪いのか? そう思う人もいるかもしれない。事実、免疫療法を提供する病院やクリニックのホームページでは、「現段階ではまだ効果が認められていないが、標準治療で治らなかった患者のために」「がん治療をあきらめない」といった表現がよく見られる。
だが、本当に患者のためならば、その治療が将来、科学的に効果が認められることを目指した取り組みを行うべきではないか。例えば、国が定めた一定の条件を備えた医療機関では、新しい試験的な医療技術を、将来の保険適用を視野に入れ、国が承認する「先進医療」という形で提供される。
また、新しい治療法や薬の候補が標準治療として認められ、広く普及することを目指した研究として、臨床研究法に則った適切なモニタリングや監査を経て行われる「臨床研究」という仕組みがある。効果が認められていない治療を提供するのであれば、このような枠組みに沿ってデータを積み上げながら行うべきだろう。
自由診療で免疫療法を提供する某クリニック主催のセミナーで、自由診療ではなく、臨床研究で行うべきではないかと質問をしたところ、「できれば臨床試験でやりたいとは思っているが、必要な資金が足りず実施できない」という答えが返ってきた。
埼玉医科大学国際医療センター婦人科腫瘍科教授の藤原恵一氏は「高額の治療費をとっているのなら、それらを基金として研究を行い、データを積み重ねればいい。それをしないのであれば、効果があることを証明する自信がないと受け取られても仕方がない」と指摘する。
がん拠点病院が先進医療を外れた治療
質の高い専門的ながん医療の提供を行う病院として厚生労働省から認可された病院を「がん診療連携拠点病院」(以下、がん拠点病院)というが、「がん拠点病院の中にも、先進医療から外れた形で免疫療法を提供している病院がある」(若尾氏)というから驚きだ。
あるがん拠点病院のホームページ(9月7日現在)を見ると、「新規に活性化自己リンパ球移入療法を希望する患者には、先進医療A(以下、先進A)の取り扱いは終了しており、自由診療の取り扱いで先進Aと同じ療法で治療を行う」という内容の記載(17年2月14日付)がある。厚生労働省の指示により先進Aから(より厳格な対応が求められる)先進Bへの変更手続きを行うことになり、先進Aを新規希望者に提供することができなくなった。そこで、希望者に対し、全く同じ治療を自由診療で提供している。