滞る担当医とのコミュニケーション
根本的には、科学的に効果の認められていない治療法を、先進医療や臨床研究としてデータを積み上げる形でなく自由診療で提供することに対し、何かしらの条件を設けるなどの仕組みが必要ではないか。この点について、厚生労働省医政局総務課保健医療技術調整官の木下栄作氏は、「高度な専門知識を有した医師によって適切な診療が行われることが大前提。国としては、衛生面など最低限度の規制は行うが、診療内容に関して一律に規制を行うようなことは現実的ではない」と語る。その前提が崩れているという認識はないのだろうか。
問題の解決にはまだまだ時間がかかりそうだ。全国がん患者団体連合会理事の桜井なおみ氏は「本来、効果の認められていない治療を受けるときには担当医に相談しセカンドオピニオンを受けることが一番だが、多くの患者が担当医に気をつかい、それをためらう」と、医師と患者との意思疎通の難しさについても指摘する。
「がんを治したい」と願い、さまざまな治療を受ける患者の気持ちは否定できない。しかし残念ながら、短期的には患者自身で自衛することが必要だ。がん治療に関する正しい情報は、国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」を見たり、無料で相談に乗ってもらえるがん相談支援センターも活用できる。免疫療法を本当に将来の患者に役立てたい者だけが提供を続けられるような仕組みにしていかなければならない。
現在発売中のWedge10月号では、以下の特集を組んでいます。
■特集『がん治療の落とし穴 「見える化」で質の向上を』
【Karte 1】玉石混交のがん治療 患者本位の医療制度の構築を
【Column】適切ながん治療を受けるための3カ条
【Karte 2】質を競い合う米国の病院 日本に必要な「見える化」
【Karte 3】効果不明瞭のまま際限なく提供される「免疫療法」の〝害〟
【Karte 4】費用対効果に劣る日本の医療構造にメスを
■特集『がん治療の落とし穴 「見える化」で質の向上を』
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【Column】適切ながん治療を受けるための3カ条
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