クスリで洗脳も
少女たちがテロに利用されるのは、イスラムの民族衣装で体を覆っているため、爆弾を隠しやすく、警戒されにくいからだ。しかし、少女らはなぜ自爆の命令に従ってしまうのか。国連の報告書などによると、少女らは誘拐された後、ボコ・ハラムのキャンプで麻薬のようなクスリ漬けにされ「天国に行ける」と洗脳されるケースが多い。
また少女らは軍の施設やモスク、市場、学校、難民キャンプといったテロの標的まで連れて行かれた後、自爆しないと背後から撃つと脅され、呪縛の中で爆弾のボタンを押す、という。最近は、少女らが人混みに入ったことを確認したボコ・ハラムの戦闘員が遠隔装置で起爆する事件も増えている。
しかし、少女らを利用するケースが増えるとともに、検問所などに近づいてくる少女らをテロリストだ、と誤認して射殺する事件も目立つようになってきた。今年はこうした誤認発砲で13人の少女が死亡している。
ボコ・ハラムの活動が活発な北東部のマイドグリなどでは、こうして誤って撃たれないよう、女性たちが衣服や体をきれいに洗うようになった。自爆テロを強要される少女らはボコ・ハラムのキャンプ暮らしが長いため、体や衣服が汚れ、異臭を放っていることが多く、こうした少女らと区別するためだ。
しかし、ボコ・ハラム側も自爆テロの少女と怪しまれないよう、少女らにマニキュアや鼻ピアスなどおしゃれをする一般女性と同じ格好をさせるようになってきており、市民の中にはテロに巻き込まれることを恐れ、少女を見ると、遠ざかる人も出始めている。
国連児童基金(ユニセフ)によると、北東部ボルノ州では学校の半分以上が閉鎖されている。ボコ・ハラムが過激化した2009年以来、教師2300人が殺害され、1400校が破壊されるなど、事実上、無政府状態に近い。一時、周辺国による多国籍部隊の掃討作戦で、ボコ・ハラムが弱体化、狂信的な指導者のアブバカル・シェカウも交代したと伝えられていた。
しかし、ボコ・ハラムは今年に入って再び勢いを取り戻し、テロを活発化させている。このため、米国は5億ドルの緊急軍事援助を行う方針だが、ナイジェリア政府の汚職や機能不全がひどく、ボコ・ハラムを壊滅するのは難しい状況だ。
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