ドイツの戦略的芸術集団「政治の美」(ZPS、本部・ベルリン)は11月22日、ホロコースト慰霊碑を批判した同国右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢」(AfD)に所属するビョルン・ヘッケ氏の自宅前に建設したホロコーストのレプリカ慰霊碑24基を竣工した。
中部テューリンゲン州のAfD党首を務めるヘッケ氏は17年1月、ベルリンに建てられたホロコースト慰霊碑について「ドイツ人は、首都中心に恥のモニュメントを建てる唯一の国民である」と演説。同党の執行委員会は、「ヘッケ氏が行った演説は党のイメージを損ねた」とし、彼に懲戒処分を与えていた。
国内では、このニュースが大々的に報じられた。社会民主党(SPD)のラルフ・ステーグナー副党首は、「憎悪を扇動している」と述べ、法律違反に当たる行為だと警告した。
こうした騒動に目をつけたのがZPSで、会員の一人は、「彼(ヘッケ氏)はとても危険な人物。党内に在籍してほしくない」と指摘。アートと政治を絡めた同集団は、ヘッケ氏の自宅前に、ベルリンにある慰霊碑同様の石柱をレプリカとして建設する行動に乗り出した。
建設に先駆け、同芸術集団はクラウドファンディングを行った。建設費と2年間の維持費を合わせた2万8000ユーロ(約372万円)を大幅に上回り、竣工からわずか6時間で、4万3000ユーロの寄付金が集まった。
ZPSはツイッター上で「ヘッケ氏は、モニュメントの大ファンであるため、彼の自宅前に建設した」と、皮肉を交えて投稿。「われわれは、正当な行為に対する恐れはない。すべては法の枠内で行動した。暴力的な活動家は、危険そのものである」と、イスラエルのテレビ局「i24ニュース」に訴えた。
ZPSはまた、「同氏がベルリンの慰霊碑前で謝罪を行わない限り、レプリカを撤去しない」と述べ、強行的な態度を貫いている。
このZPSの活動に対し、AfDは、「一家族のプライベートを破壊する目的があり、人間の尊厳を攻撃している」との声明文を発表。監視下で数カ月間、政治家の自宅前で作業を継続したことを非難した。
ベルリンには、ナチスによって虐殺されたヨーロッパのユダヤ人犠牲者を追悼する「ホロコースト記念碑」が2005年に完成。2711基の石柱が並んでいる。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。