ドゥテルテ政権下の麻薬撲滅戦争に関する世論調査が10月23日に公表され、密売犯らを射殺する警察側の言い分を「信用できない」と答えた国民は、全体の38%に上った。昨年末の調査結果から10ポイント近く増え、警察への不信感が高まっている。
調査結果は、「(麻薬密売の)容疑者に抵抗されたから発砲した」とする警察側の主張について、「明らかに真実ではない」と答えた国民が19%に上り、「恐らく真実ではない」の19%と合わせ、警察を信用できないと答えた国民は38%で、信用できると答えた18%を大きく上回った。
麻薬撲滅戦争は、2016年6月末のドゥテルテ政権発足後に実施され、警察がこれまでに殺害した麻薬密売・所持の容疑者は約3800人に上る。これに加えて約2000人の容疑者が、「自警団」と呼ばれる組織や口封じのために密売組織に殺害されたと言われる。警察による殺害については、逮捕の際に抵抗されたための「正当防衛」という主張がある一方、「超法規的殺人」「貧困層の容疑者が標的にされている」という批判の声も強い。
この調査結果に対して大統領府報道官は、「(超法規的殺人に対する)抗議集会が開かれたタイミングで世論調査が行われた」と反論し、調査結果が集会に左右された可能性を指摘した。この集会は9月下旬、首都圏マニラ市のリサール公園で行われ、ドゥテルテ政権に反発する1万人以上の市民が集まった。
8月半ばにルソン地方ブラカン州、首都圏マニラ市などで警官による容疑者射殺が集中的に行われ、80人以上が死亡したことも警察への不信感を高める要因になったとみられる。特に首都圏カロオカン市では、17歳の男子高校生が「麻薬を所持していた」として射殺されて社会問題化し、国会議員の間でも「警官は殺人犯」「このような非合法は許されるべきでない」といった怒りの声が相次いだ。
世論調査の結果が公表される直前、大統領府は、警察による犯行が濃厚だったある男性被害者について見解を一転させ、「警察ではなく、麻薬密売組織に射殺された」と述べた。この男性が殺害された現場の写真は昨年7月、英字紙の一面に大きく掲載され、被害者を抱きかかえる交際相手の女性が嘆き悲しむ表情が国際的な注目を集めた。しかし、事件から1年以上が経過した段階で大統領府は、「現場の状況証拠から麻薬密売組織に殺害された」と結論付けた。
政府は10月上旬、麻薬撲滅戦争の任務から国家警察を外し、大統領府麻薬取締局(PDEA)に一任する方針を示していた。この経緯についてドゥテルテ大統領はテレビ番組のインタビューで「お前たちが批判ばかりするから警察を任務から外したんだ!」と説明し、これ以上麻薬撲滅戦争に介入しない意思を明らかにした。