――執筆にあたり、脚本家の倉本聰さんとお会いになられたそうですが、どんなことを話されたのでしょうか。
倉本さんとは二度お会いしました。一度目は2017年3月に、企画書とあらすじを持参して東京で。その時に、「存分にやってください」と言っていただけたので、非常に勇気づけられました。
二度目は初稿が出た8月に、富良野の倉本さんのご自宅へ伺いました。事実確認をお願いして原稿を置いてきたのですが、その3日後くらいにご本人から電話をいただき、開口一番「いや、面白かったです!」と言っていただけたので、心底ほっとしました。事実と異なる部分はいくつか訂正をいただきましたが、蛍の性格に関する考察など、私なりの解釈で書かせていただいた部分については一切ご指摘を受けませんでした。
倉本作品の「凄味」とは
倉本さんは、ご自身が経験されたことと、実際に経験した人から直接聞いたお話をベースに物語を構成されていくそうです。
たとえば、純は大人になってからごみ収集の仕事に就きますが、倉本さんはそのシーンを描くため、いちばんきつい夏場の時期にごみ収集の仕事を体験されたそうです。純が臭いを気にして頻繁に手を洗ったり、コロンを付けるようになるシーンはすごくリアリティを感じさせられますが、それも実体験をもとに書かれているからだと思います。それが、倉本作品の凄味にもなっているわけです。
そうやって倉本さんが体験にもとづいて書かれた物語を、数値や法律などの裏付けをもとに、当時の時代背景や社会の変化を解き明かそうというのが本書の狙いになります。ドラマをご覧になっていない方にも、日本の戦後史をなぞる一助として、興味深くお読みいただけると思います。
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