中国共産党の圧力や攻勢に対する最大の防御は、表現の自由や開かれた透明なルールである、と英エコノミスト誌が述べています。そして、中国の攻勢・圧力を通常の「ソフトパワー」に対する「シャープパワー」という名で呼んでいます。
このエコノミスト誌の議論には、特段の新しさはないので、いまさら自明のようなことを議論する必要はないということになるかもしれません。しかし、あえて自明のことを今の時点でくりかえすのは、それだけの今日的意義があるということでしょう。
欧州から見た中国との関係はどうしても安全保障の観点からではなく、経済的観点から見たものに大きく左右されます。中国の硬軟両様の戦略・戦術の中では、特に資金・カネを使うということが重要な工作手段となっています。
本社説の豪州、ニュージーランドなどの例はその一例にすぎません。
過日、トランプ大統領の訪中に際し、米中間で28兆円にのぼる商談が成立しましたが、そのためでしょうか、トランプはそれまでは米中の貿易インバランスは中国側の「為替操作」によるものとして非難していましたが、上記商談成立後、貿易インバランスはこれまでの米側政権の失策によるものである、と認めてしまいました。これなどは、中国がいかに巧みにその経済力を使用したかの見本のようなものです。
「はじめ経済、あと政治」、「商をもって政を包囲する」というのは、中国の研究者らがよく使う用語です。
中国の対外活動は、近年(1)武力を背景とした脅迫(2)弱い者いじめ(3)圧力からなっているとエコノミスト誌は分析しています。今日の中国はその影響力の浸透をはかるため、あらゆる可能な手段を用いていると見るのが実態に即しています。
中国の弱いもの苛めの例は枚挙に暇がありません。とくに自由や人権の抑圧という面では、劉暁波のケースに見られるように徹底的に弾圧を行います。対台湾政策の面では、「島に入り、家に入り、頭に入る(「入島、入戸、入脳」)」というスローガンによく示されているように、心理戦ともいうべき統一戦線工作を実施しています。
これら硬軟両様の各種圧力に対し、有効な防御策は、本社説のいうとおり、これら圧力に透明な光を当て、隠された意図を白日の下にさらすことです。具体的には、スパイ防止活動、法律による規制、独立のメディアの存在確保などがそれにあたるでしょう。
中国共産党の戦略・戦術が、これら透明化のための防御策に対し、意外に脆弱な面を持っていることもまた事実です。
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