11月30日付の英エコノミスト誌が、中国の欧州に対する直接投資は急増しているが、これに如何に対応すべきかについてEU諸国の思惑は一致しないという解説記事を掲載しています。要旨は、次の通りです。
今でもアルバニアの田舎でガタガタと動く中国製のトラクターを見かけるが、1960年代に中国マネーに助けられたこの国が、国連の代表権問題で中国を最初に後押ししたことを思い出す。
今週、李克強首相が第6回中国・中東欧協力会議(16+1)に出席し、ブタペストで、30億ユーロの投資を約束した。エストニアの酪農、スロバキアの貨物運送、セルビアとハンガリーの間の高速鉄道が投資案件として提案されている。
しかし、欧州諸国の中では懸念も生じている。第一に、中国マネーに走ることで、中国の利益の代理人になる政府が出かねない。この懸念には根拠がある。6月にギリシャが中国の人権状況に関して国連におけるEUの共通の立場に拒否権を行使した。その前には、ハンガリー、ギリシャなどの圧力で南シナ海での中国の行動に関するEUの声明に手加減が加えられたことがある。
第二には、中国が枢要なインフラを取得し、その機密を入手することである。中国の野心とその規模は先鋭化している。中国は「Made in China 2025」戦略の下、航空機やロボット産業でハイテク強国に変身することを目指している。それには欧州の革新的企業とそのテクノロジーを掴み取ることが近道である。
欧州の状況に変化もある。ドイツでは、中国に対する懸念が広がりつつある。昨年、ドイツのロボット企業大手であるKUKAが中国の家電メーカーMidea(美的集団)に買収された。ガブリエル経済相(当時)は技術の中国への流出を防ぐために欧州企業の買い手を探したが駄目だった。ドイツは投資審査のルールを厳格化しつつある。
しかし、外国投資を阻止する欧州の手段は限られている。今年2月、独仏伊の3国は「戦略的」分野については、投資審査の権限をEUに集中することを提案したが、北欧の自由貿易を信奉する諸国、中欧の中国に賭ける諸国、南欧の中国の恩恵に与っている諸国の連合軍の抵抗に遭遇した。今や欧州委員会が提案しているのは審査に関する加盟国間の調整のための軟弱なEU規則である。
中国投資の膨張は深刻な問題である。しかし、トランプとBrexitの時代には、開かれた国境とルールに基づく秩序の維持を主張するのは欧州の役割である。各国政府は、用心しながらも出来ることに自信を持つことも有用である。
出典:Economist ‘Some Europeans fear a surge of Chinese investment. Others can’t get enough of it’ (November 30, 2017)
https://www.economist.com/news/europe/21731826-there-more-cheer-jeer-about-chinese-investment-eu-some-europeans-fear-surge