2024年12月9日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月14日

 米超党派政策センターのダンフォースが、米国の対トルコ政策は、強硬姿勢よりも、トルコが権威主義的支配から脱するのを助けるべきである、と1月10日付のニューヨーク・タイムズ紙で論じています。要旨は、次の通りです。

(iStock.com/Digital Vision./ ParfonovaIuliia/ Iryna_Cullinan)

 1月3日、ニューヨークの連邦陪審は、イランの制裁逃れ幇助に関わる金の密輸計画に関与した容疑で、トルコの銀行家に有罪評決を下した。裁判ではこの計画がエルドアン大統領の承認を得ていたとの証言があった。エルドアンは、この事件は、2016年のクーデタ未遂等CIAによる工作の一環であると述べた。

 米・トルコ関係は、シリアのクルド人兵士への米国の支援から、トルコによる米大使館職員の逮捕まで、様々な問題をめぐり緊張している。

 エルドアンは米政府とトルコの野党から汚職で批判され、包囲されていると感じている。エルドアンは国内での弾圧と反米レトリックを続けるだろう。

 米国は深刻なジレンマに直面する。エルドアンが攻撃的になればなるほど、米国はエルドアンへの圧力を強めるが、それはトルコを不安定化させる。すでに議会ではトルコへの経済制裁が議論されている。トルコが、米領事館の現地職員を逮捕した際、米国務省は、トルコにおける非移民ビザの発給を数か月間停止した。また、トルコは、ロシア製防空ミサイルを購入した。

 しかし、米国の対トルコ強硬姿勢は、関係悪化を逆転させることにはならない。トルコは既に深刻な経済的対価を払っている。クーデタ未遂後の粛清と非常事態宣言の継続は、外国人投資家を逃避させている。トルコにとり、シリアのクルド人兵士に対する米国の支援は大きな問題である。

 トルコの状況が悪化するにつれ、圧力強化が逆効果となるリスクが高まっている。制裁は、トルコの経済危機の可能性を高めるだけで、トルコは西側と完全に決別すべしとしている勢力を力づけるだろう。

 経済がいくら悪化しても、エルドアンが排除されることはありそうにない。エルドアンの失脚は、暴力につながるだろう。トルコを追い詰めるのは、トルコ人はもちろん、米国人の理想と利益の増進にほとんど資することはない。

 米国の政策は、トルコが出来る限り早く権威主義的支配から脱することを支援することに向けられるべきである。

 最後に、トルコのクルド紛争のエスカレーションを阻止することが重要である。米国は、シリアにおける外交的梃子を、トルコによるクルド人兵士への攻撃やクルド人組織によるトルコでのテロの防止に用い得る。しかし、トルコの政治的混乱は、米国との関係同様、さらに深まるだろう。結局、米国とトルコが共有する唯一の利害は、トルコの不安定化を防ぐことぐらいかもしれない。

出典:Nick Danforth ‘The Only Thing Turkey and the U .S. Can Agree On’ (New York Times, January 10, 2018)
https://www.nytimes.com/2018/01/10/opinion/turkey-united-states-erdogan.html?_r=0


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