「翌年は自分が必ず選ばれる。そのためには、連志がやっている練習の倍をやると決めました。練習、練習、練習あるのみです」
練習に対する意識が貪欲になり、生活も一変した。練習日を増やし、練習時間も増やした。高校生なので友達と遊びに行きたいと思うときもあったが、ほんの少しの時間も練習にあてた。「基本的に怠け癖があるので」という古澤は、何が何でも鳥海の倍の練習量をやるんだと決めて体育館に向かった。
「当時の生活は学校と体育館ばかりです。まず授業が終わるとすぐに体育館に行って個人練習をしました。社会人のチームなので練習は夜です。学校が終わったあとの時間はすべて練習に使って、あとは家に帰って寝るだけという生活で、バスケ、バスケ、バスケの毎日でした」
「僕が日本代表に選ばれるには平均的に伸ばさなければならなかったのですが、とにかく得点力を高めようと個人練習ではひたすらシュート練習をしていました」
「当時、国内にスリーポイントシュートを打つ選手は少なく、日本代表に数人いた程度だったので、その中の1番になりたいと思っていました」
「あんなに練習ができたのも母が車で送り迎えしてくれたおかげです。母には感謝しかありません」
だが、明暗はさらに色濃く分かれた。鳥海はリオ・パラリンピックの日本代表に選ばれ、古澤は代表入りを逃した。
「バスケはチームプレーです。みんなで築き上げていくスポーツですから積み重ねが必要です。あと一歩だったという感覚とそれを逃した悔しさを同時に感じました」
しかし、この雌伏の時期があればこそ磨かれたものがある。
キャプテンとしての役割
2016年古澤はU23日本代表のキャプテンに指名され、翌2017年の「IWBF U23世界車いすバスケットボール選手権アジアオセアニアゾーン予選会」では、予選リーグを全勝で突破し、決勝ではイランに敗れ準優勝。さらに同年カナダで開催された「IWBF U23世界車いすバスケットボール選手権」ではベスト4進出を果たし、個人賞として古澤と鳥海は同大会の「オールスター5」にも輝いた。
「僕の強みはボールハンドリングとスリーポイントシュートです。この二つが今の僕の最大の武器になっています。U23世界選手権ではそのボールハンドリングとスリーポイントシュート、カットインで自分主導で相手にリアクションをさせることができて自信に繋がっています。これは同世代の選手たちには負ける気がしません」
さらに、
「U23のメンバーも日本代表強化指定選手として、フィジカルトレーニングをしているので細くても体幹がしっかりしていて体の大きな海外の選手と戦ってもぜんぜん大丈夫です。逆に大きな選手をふっとばすという楽しみもありますし、相手が強すぎる場合は当たらせないようにすればいいだけです」
「日本チームは低いのに強くてスピードもあって、予選ラウンドはイギリス以外には負けなしで、世界のベスト4までいけたことが自信になりました。僕たちは世界で十分戦えるという自信を持っています」
悔しさを原動力に積み重ねたシュート練習が実を結んだ。古澤は個人としてもチームとしても自信を深めている。