2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年4月2日

 3月4日に、英国のソールズベリーにおいて、ロシア人で英国の二重スパイであったセルゲイ・スクリパルとその娘が神経ガスで襲撃され、意識不明の重体に陥る事件が起こった。本件にはロシアの化学兵器ノビチョークが使用されたとされ、メイ首相は「ロシアによる英国への武力行使に当たる」としている。英国は国連の安全保障理事会の緊急会合を要請し、そこでも議論がなされた。

(iStock.com/flyparade/tonivaver/AleksandarDickov)

 英政府は、23人のロシア外交官を国外追放、あらゆるレベルの高官対話を中止、モスクワでのW杯への王室メンバーと閣僚の出席を見合わせるなどの対抗措置をとった。ロシアは関与を否定し、同じく23人の英外交官を報復として追放した。

 3月15日に仏独英米首脳の共同声明、3月19日にEU加盟国外相の共同声明、3月22日にEU加盟国首脳の共同声明などが発せられている。この中から、EU首脳共同声明を以下の通りご紹介する。

 欧州理事会は、ソールズベリーにおける襲撃事件に対し、最も強い調子で非難し、生命を脅かされたすべての人々に最も深い同情を表明し、進行中の捜査を支持する。事件の責任はロシアにある可能性が高く(highly likely)、それ以外の妥当な説明はない、とする英政府の評価に同意する。我々は、我々の共通の安全保障に対するこの重大な挑戦に際し、無条件に英国と連帯する。

 化学兵器の使用は、全く受け入れられず、組織的かつ厳しく非難されるべきで、我々全てに対する安全保障上の脅威をなすものである。加盟国は、ロシア当局からの回答(注:英国はロシアに対しノビチョークに関するすべての情報を化学兵器禁止機関(OPCW)に提出するよう求めている)に照らし、歩調を合わせて対応する。欧州連合は、本件とその意味に、注意深く焦点を当て続ける。

 こうした背景に鑑み、欧州連合は、化学、生物、放射線、核関連のリスクに対する耐性を強化しなければならない。それは、欧州連合とその加盟国およびNATOとの間の協力強化を含む。欧州連合と加盟国は、サイバー、戦略的コミュニケーション、防諜活動を含む分野における、ハイブリッド脅威への対処能力を強化し続ける。欧州理事会は、6月の理事会までにこの作業を前進させるよう、欧州委員会と上級代表に要請する。

出典:‘European Council conclusions on the Salisbury attack, 22 March 2018’
http://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2018/03/22/european-council-conclusions-on-the-salisbury-attack/


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