2024年7月14日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年4月27日

 今回の空爆の目的は明確であり、化学兵器の使用を罰し化学兵器の使用を抑止するということである。本演説でも、第一次大戦後、化学兵器の使用が禁止るようになった経緯に触れ、化学兵器の使用が国際法上違法であることを強調している。国防総省のホワイト報道官は、今回の攻撃では標的だけを攻撃しており、シリアの化学兵器使用に相応の処置であり合法的である、と述べている。その通りであろう。また、アサド政権の次の目標と見られるイドリブ県の制圧作戦で再び化学兵器が使用される惧れもあったので、時宜に適った必要な措置であった。

 前回、昨年4月の攻撃では、59発の巡航ミサイルがシリアの空軍基地に撃ち込まれたが、今回は約2倍となる105発が撃ち込まれた。3か所の化学兵器の製造・貯蔵関連施設の破壊を攻撃の目標としたことは、化学兵器の使用阻止という目的を明確にしていると言える。そして、最も重要なことは、今回は米英仏という国際的枠組みによって実施された点である。この3か国は、いずれも安保理常任理事国である。米国による単独行動よりも、化学兵器の使用は許されないとする国際社会の考えを、より強いメッセージとして発することができ、適切であった。ただし、トランプも言う通り、アサドが化学兵器の使用を止めるようになるまで、しっかり対処し続ける必要がある。

 今回の攻撃の目的は、上に述べた通り限定的なものであり、シリアにおけるパワーバランスを変えるとか、レジームチェンジを直接目指したものではない。米英仏側はロシア軍に被害が出ないよう配慮し、ロシア側もシリア防衛のために最新の防空システムを用いなかったとされている。双方とも、全面的な軍事衝突は望んでいないと見られる。

 トランプは、シリアへの米軍の駐留を早期に終わらせると言っているが、他方、米国の国益が守られることが重要であるとも繰り返している。ロシアもさることながら、トランプ政権が敵視するイランがアサド政権支援を止めることは考えられず、イランが地域における影響力を伸長させるとなると、米国としては、やはりシリアから早期に撤退するということは難しいと思われる。地域の安定化に必要な駐留は続けざるを得ないということであろう。なお、現在はロシアとイランの側についているトルコはアサド政権と強く敵対しており、今回の攻撃を強く歓迎している。トルコはNATOの同盟国であり、潜在的にはイランとライバル関係にある。シリア情勢をめぐっては、トルコの動向も注視する必要がある。

  
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