広島・中村奨成はどうしているのか?
では、その清宮とは甲子園でライバル関係にあった広島・中村奨成(広陵)はどうしているのか。昨年夏の甲子園で、PL学園・清原和博の1大会5本塁打を抜いて6本塁打の新記録をマーク。清宮に優るとも劣らないスラッガーとして勇名を馳せ、地元の広島にドラフト1位で入団しながら、プロ入り後は名前を聞かなくなって久しい。が、チーム関係者は「何も焦ることはない」とこう説明する。
「奨成の場合、二軍でより多くの打席に立つことが必要だ。加えて、キャッチャーとしても経験を積ませなければならない。一軍には正捕手の会沢(翼)がいて、ベテランの石原(慶幸)もまだまだ元気。奨成より1年早く入団し、一軍で使われている1歳年上の坂倉(将吾)の評価も高い。打者と捕手の両方でのし上がるには、まず2年目の坂倉との対決に勝つ必要がある」
ウエスタン・リーグ開幕後の1カ月、水本勝巳二軍監督の起用法を見ていると、中村奨と坂倉はDHと捕手で、ほぼ交互に使われている。一方が7、8番で捕手、一方がDHに入るのだが、中村奨のほうが時折1番・DHで使われているのが興味深い。パンチ力だけでなく、広角に打てるセンスや俊足を買われている証拠だろう。
そこで思い出されるのが、広島の苑田聡彦スカウト統括部長が中村奨成を獲得する際、「あの肩は内野手としても武器になる」と話していたことである。「三塁手にしたら、恐らく日本一の選手になる。あの肩で三塁からビューッと送球し、一塁で打者走者を刺したら、スタンドのお客さんも沸くよ」というのだ。
捕手だけではなく内野手としても使えるとなれば、中村奨にとってもチャンスが広がる。首脳陣がそういう可能性を視野に入れているのだとすると、打席が数多く回る1番・DHに中村奨を入れていることにも合点がゆく。
ちなみに、中村奨の一歩先を行く坂倉は、いまの広島でも群を抜く練習の虫。水本二軍監督をして、求道者と呼ばれた前田智徳にも匹敵すると言わしめているほど。こういう強力なライバルと競わせることもまた、金の卵の育成法のひとつと言える。
広島でサバイバル・レースを課された中村奨と、日本ハムでエリート教育を受ける清宮。これからどちらがどんなふうに成長するか、大いに楽しみである。
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