再エネ関連雇用が減少する欧州
再エネの固定価格買い取り制度(FIT)を主要国で最も早く導入したドイツを筆頭に、欧州主要国は太陽光、風力発電設備の再エネ支援政策を相次ぎ導入したが、日本の菅直人政権がFIT導入を進めた2012年には、欧州主要国はFIT導入に伴う電気料金の上昇に悩み、軒並み買い取り価格を引き下げるなどFIT見直しに動いていた。
2012年7月、日本はFITを開始したが、その翌2013年には、スペインは買い取り価格を遡及して減額した。日本の2012年度に認定された10kW以上の事業用太陽光発電設備からの電力の買い取り価格は税抜き40円だったが、この買い取り価格を、例えば突然20円に減額しますという制度変更をスペイン政府は行った。40円で20年間買い取ってもらえると思って事業を開始した事業者は採算性が大きく悪化することとなり、一部事業者は訴訟を起こしたが、スペイン最高裁は制度変更を認めた。
買い取り価格を引き下げていたドイツでは、再エネ設備導入量が大きく減少することがなく、電気料金による負担額が引き続き上昇したため、政府は2014年家庭用太陽光発電設備を除き固定価格での買い取りを原則廃止した。この結果、図‐4が示す通り、太陽光発電設備導入量は急減し、買い取り負担額の上昇も、図‐5の通り抑制されることになった。太陽光設備導入量の増加に手を焼いたイタリア政府は、2014年買い取り価格の遡及減額を行い、太陽光発電事業者に新税を導入した。
欧州各国のFIT制度見直しと買い取り価格の減額は、太陽光発電設備導入量の減少を招いたが、その結果、欧州各国の太陽光発電関連雇用は大きく減少した。図‐6はスペイン、ドイツ、イタリアの2008年と2016年の太陽光発電関連雇用者数をしめしている。雇用は29万人から3万5000人に大きく減少した。設備導入量は減速したものの、累積設置量は僅かながらでも増加している。なぜ、雇用は大きく減少したのだろうか。