2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年7月19日

 「人類運命共同体」の内容は、まだ、あまり具体的に示されているわけではないが、相互尊重・平等な協議、相互理解、公正・公平、互恵、文明の多様性尊重、環境保護などが含まれているようである。「文明の多様性尊重」は、一見もっともであるが、「互恵協力決議」が示唆するように、自由、民主主義、人権尊重、国際規範の遵守を普遍的価値とみなす現行の国際秩序に注文をつけているとも解釈できる。習近平は、昨年の第19回党大会で「人類運命共同体」の説明として、冷戦思考の放棄、同盟の代わりにパートナーを組む、などのことも言っている。これは、米国を中心とする同盟ネットワークへの対抗を意味するように思われる。なお、昨年1月15日付けの人民日報は、人類運命共同体について「中華文明に根差した外交理念」と解説している。華夷秩序を連想せざるを得ないような表現である。中国が目指す「人類運命共同体」の具体的内容が如何なるものになっていくのか、注視していく必要がある。

 今回の中央外事工作会議における習近平の演説では、一帯一路、AIIBの推進とともに、「途上国は中国外交にとり天然の同盟軍」という表現も目を引く。理念として「人類運命共同体」を掲げつつ、一帯一路やAIIBにより途上国を中国の影響下に置き、中国中心のグローバルガバナンスを目指すということであると推測できる。

  
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