現在の連邦議会上院では、共和党が51議席、民主党系が49議席を占めている(民主党系というのは、バーニー・サンダースのような無所属候補を含むためである)。連邦判事の任命には上院の承認が必要であり、仮に票が50対50に分かれた場合は最後の一票を上院議長を兼職する副大統領が投じることになるので、カバノー承認にむけて50票の確保が目指されている。共和党の上院議員については、アリゾナ州選出のジョン・マケインが脳腫瘍で闘病中であり、投票に訪れるかは不明である。また、メイン州選出のスーザン・コリンズなどはロウ判決を撤回する候補には投票しないと宣言している。このような状態のため、大統領や保守派は、民主党上院議員から複数の賛成票を獲得する必要があると判断している。
昨年トランプが指名したゴーサッチ判事については、インディアナ州のジョー・ドネリー、ウェストヴァジニア州のジョー・マンチン3世、ノースダコタ州のハイディ・ハイトカンプという三名の民主党上院議員が支持した。これら上院議員は、2016年大統領選挙でトランプが大勝した保守的な州から、今年の中間選挙での再選を目指している。トランプに投票した人の間で依然トランプが高い人気を誇っていることを考え、保守派はこれら議員の取り込みは可能と判断している。これら候補は、保守的な有権者に配慮するのか、それとも、民主党主流派に足並みを揃えるのか、難しい判断を迫られるだろう。
中間選挙に及ぼす影響は?
カバノー指名が今年の中間選挙に及ぼす影響も、一つの見どころとなるだろう。
例年、連邦議会は7月のいずれかの時期から休会に入るのが一般的だが、ミッチ・マコーネル共和党院内総務は、今年は休会しない方針を示している。民主党議員をワシントンDCにとどめて、中間選挙での民主党の選挙活動をやりにくくしようという意図によると言われている。この様な判断がなされたのは、大統領選挙の次の中間選挙は大統領への信任投票としての意味が込められることがあり、大統領の所属政党が議席を減らす傾向があるといわれているためである。今年は、トランプに反発する民主党が積極的な動員を図っているのに対し、共和党に有利な条件はほとんどないと考えられてきた。
ケネディ引退とカバノー指名は、この状況を一変させた。連邦議会選挙では、選挙区の個別利益を重視した投票行動がされる傾向が強いため、中絶や同性婚などの争点は、大統領選挙の際と比べると重視されにくく、社会的保守派の動員も進みにくい。だが、今年は判事任命問題を積極的な争点とすれば、社会的保守派の動員も進められるとの期待が共和党内部にある。もちろん、この問題は保守派の活性化を招くとともに、カバノーに反発する民主党側の活性化も引き起こす可能性がある。とはいえ、カバノーに反発する人々はすでに反トランプの立場で運動を活発化させていることを考えれば、カバノー指名は相対的に共和党に有利な状況を作り出したといえるだろう。
カバノー指名が選挙に与える影響は、承認プロセスがいつ開始され、上院でいつ投票されるかにより変わってくると思われる。今後の駆け引きに注目する必要がある。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。