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Wedge REPORT

2018年7月25日

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米山秀隆 (よねやま・ひでたか)

富士通総研経済研究所 主席研究員

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。89年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所を経て現職。専門は、住宅・土地政策、日本経済で、特に空き家問題に詳しい。主な著書に『限界マンション』『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社)などがある。

所有者がわからなくとも利用できるためには?

 所有者不明土地対策については、国土交通省は、2016年3月に出した報告書「所有者の把握が難しい土地への対応方策」において、所有者探索の円滑化の必要性を指摘し、関連制度を活用するためのガイドラインを策定した(2017年3月に第2版を公表)。合わせて所有者不明とならないよう相続登記を働きかける必要性を指摘した。所有者不明の土地への対応のため、現行制度の範囲内で、最初に取り組まなければならない課題をまとめたものである。

 相続登記を促す自治体の取り組みとしては、京都市精華町の事例がある。精華町では、死亡届の提出があった場合、総合窓口で受付けを行い、関係課と連携して書類を取りまとめ、死亡届に伴う諸手続きの案内資料として相続人に送付している。そして手続きのため訪れた際には、総合窓口で戸籍・住民票関係の対応をし、死亡者が土地所有者である場合には、固定資産税係が総合窓口まで出向き、法務局で相続手続きが必要になることを説明し、相続登記の際に必要となる書類等を渡す。さらに、農地や森林の所有の有無については総合窓口が聞き取った上、農業委員会に案内し、届出の対応を行う。

 このように精華町では、相続時にワンストップで案内する仕組みを整えている。こうした対応により、農地法に基づく届出が2010年に年間2~3件だったものが、2011年以降、年間20件程度となり、効果が現れた(国土交通省『土地白書 2017年版』)。

 所有者不明土地の利用を促す新たな仕組みとしては、所有者がわからなくとも利用できるよう、利用権設定を可能にする仕組みが新たに導入された(「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が2018年6月成立)。都道府県知事の裁定により所有者不明土地の利用権を設定し、補償金を供託した上で公共性を持つ事業に使えるというものである。所有者不明土地の存在で公共事業が滞っているようなケースにおいて、利用が期待されている。

 一方、相続時の登記を促すため、登記義務化の必要性がしばしば指摘されている。しかし、義務化しても罰則強化は難しく、実効性を持たせることができないとの難点もある。登録免許税等の登記費用の総額が土地の価値を上回る場合は、登記を促進する効果はあまりないと考えられる。義務化よりは登録免許税の減免措置を導入し、さらに将来的には安価な手数料とすることで、コスト面で登記を促していく方が現実的とも考えられる。

 所有者不明土地が現在以上に増やさないため、マイナンバーを活用して、登記簿や戸籍の関連データを一括管理する仕組みも提案されている。しかし、マイナンバーの利用範囲を広げるためには法改正が必要となり、国民の理解を得られるかは不透明である。マイナンバーを使わなくても、精華町におけるような、死亡情報がほかに手続きを要するところに流れていく仕組みがあればよく、まずは現行制度の範囲内で、必要な情報の流れが実現されるような仕組みを構築するのも一案と考えられている。

 こうした今後の課題については、2018年度中に具体的な方向性を提示した上、2020年までに必要な制度改正を実現する方針が示されている(「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」2018年6月、「骨太の方針2018」2018年6月)。

 ただ、所有者が補足されたとしても、人口減少時代においては、所有者にとっては次の使い手が現れる可能性が低くなるうえに、将来にわたって責任を持って管理し続けることも難しくなっている。現在の日本では、こうした土地について、最終的に誰がどのように管理していくのかについて、新たな仕組みを構築する必要性が高まっている。

 

米山さんの新著『捨てられる土地と家』(ウェッジ)


 













 

  
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