WEDGE REPORT

2018年8月25日

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竹田有里 (たけだ・ゆり)

環境ジャーナリスト

環境ジャーナリスト。TOKYO MXでニュースキャスター、社会部・政治部記者を歴任。災害報道や環境番組を制作した後、フジテレビの環境ドキュメンタリー番組「環境クライシス」の記者として企画制作・出演。その傍ら、上智大学地球環境学研究科(修士)に在籍し、今秋修了予定。その他、雑誌・ウェブページでも執筆。文化放送「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」でサブキャスター・記者としても活躍。

 遊牧民たちは、何千年も前から先祖代々受け継がれた自然が創り出す恵みの中で生きてきた。環境問題とは程遠い世界で生きていた彼らに罪はない。しかし、我々先進国が地球に鞭を打ち続けたその罰を受けるのは、こうした何ら罪のない遊牧民のような「環境難民」である。気候変動の影響を真っ先に受ける人々を減らすためにも、我々先進国ができることはたくさんあるだろう。今回の西日本で起きた豪雨も、気候変動の影響も受けているといえよう。筆者の地元も、壊滅的な被害を受け、多くの人々が行き場を失った。我々日本人は、「環境難民」は遠い国の話であると思いがちであるが、肝に銘じてほしい。我々も「環境難民」になる日がすでに襲来しているということを。

 「環境難民」の数は、年々急速に増え続けていて、2050年には全世界で10億人に至るとも予想されている。

Column  世界最南端のトナカイ遊牧民ツァータン族の危機

 気候変動は、少数民族の存続にも影響を及ぼしている。ロシア国境沿いのツァガンノール(ウランバートルから車で48時間!)の山奥に、トナカイを遊牧する人たちツァータン族が点々と住んでいる。そのうち取材をしたのは、3家族14人。野営地には、400頭ものトナカイが飼われていた。1歳の男の子がトナカイの放牧の基礎を父親から学び、斧で薪を割る練習をしていた。
左・ツァータン族の家族、右・オルツと呼ばれる移動式住居
  そんなほのぼのとした地域は、モンゴルで最も温暖化の影響を受けているエリアの一つ。具体的な影響は、

・トナカイの餌であるトナカイ苔の成長が悪く、トナカイがやせ細る。
・これまで発生しなかったダニ類がトナカイに病原菌をもたらし死に至らしめる。
・日中暑くトナカイが動けないので夜に放牧するが、降雪量が少なく、トナカイが泥にはまり走れなくなり、夜行性の狼などに食われてしまう。

と多岐にわたっている。

 目まぐるしく変わる環境下にいても、子供たちは「この村が好き。トナカイを遊牧する生活はやめたくない」と頬を真っ赤にして屈託ない笑顔で言い切った。
トナカイの世話をするツァータン族
 先日、パリ協定の元で温室効果ガスの削減目標を達成しても、世界の気温が4℃から5℃上昇するというニュースが飛び込んできた。ツァータン族も「環境難民」とならざるを得なくなるのも時間の問題だ。

撮影:竹田有里

  
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