2024年4月20日(土)

解体 ロシア外交

2018年9月6日

 しかし、現在の色丹島には返還ムードは全くないといって良い。穴澗港に建設されている工場が象徴的だという事はすでに述べたが、今回の参加者から色丹島が日ソ共同宣言で日本への返還対象となっていることについての意見を求めたところ、色丹地区長・斜古丹村長 のセルゲイ・ウーソフ氏は、ビザなし交流における質問として適切ではないとしつつ、日本が北方領土を要求するなら、かつてアイヌはロシアに納税していたのだから、ロシアは北海道を返せとも言えるはずだと*2、強く反発して返還可能性を一蹴した。

 このようにかつては色丹島については返還ムードもあったにもかかわらず、現状では全ての国で返還ムードはほとんど消えてしまっていた。そもそも北方領土といっても、各島で性格が顕著に異なっており、それぞれの島に対して個別の理解、アプローチが必要なのだが、日本にとって望ましくない共通性が生まれてしまったのは残念なことである。

日本はどうすれば?

 このようにロシア側の北方領土返還に対するムードはかなり悪くなっていると言わざるを得ない。しかも、ロシア側は、日本が返還を諦めたとすら思っているようだ。今回の北方領土訪問中にも、「最近は日露首脳会談でも、両首脳はともに北方領土のことに触れず、経済の話だけをしていることからして、日本ももう返還してもらう気はないのだろう」というような発言を何度も聞いた。

 しかし、筆者は粘り強く返還要求を続けるべきだと考える。元島民やその子孫たちの人権、心情に最大限の配慮がなされるべきである。元島民の方々は、ロシア化の現状をとても辛く受け止めていらした。また、今回も国後島、色丹島で墓参を行うことができたが、元島民が墓参を気軽に行われる状況が最低でも構築されるべきである。

色丹島での墓参

 また、日本は北方領土領域での漁業に毎年多額の入漁料を支払っている。特に昆布漁は根室から目と鼻の先の貝殻島周辺で行われるというのに、今年も9024万円を支払った。そして、支払っても、多くの制限が課され、漁船が拿捕されることも少なくない。さらに、北方領土領域で取れたカニ、ウニ、ホタテなどを極めて高値でロシアが売りつけてくると根室の水産業の肩が激しく憤っていらした。北方領土は日本固有の領土として、強く返還を主張して行くべきだと考える。

*2:確かに「千島アイヌ」はロシアに納税していたが、「北海道アイヌ」はしておらず、この発言にはなんら根拠がない。


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