2024年12月9日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年9月26日

 ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ政権高官の匿名の寄稿‘I Am Part of the Resistance Inside the Trump Administration’を、9月5日付けで掲載した。同寄稿は、トランプ大統領に対する「静かな抵抗」が存在し、トランプ大統領のアジェンダと性向を必死に阻止しようとしている、と述べている。ニューヨーク・タイムズが匿名の寄稿を受け付けるのは極めて異例のことであり、寄稿者が高位の人物であることを窺わせ、ペンス副大統領の名前すら挙がった。

(dvoriankin/iStock)

 寄稿文は、トランプの資質の問題点につき、次のように指摘する。

・衝動的、敵対的、取るに足らないことにこだわり、効果的でない。
・会議では、トランプはすぐに話題がそれ、繰り返しぶつぶつ文句を言う。
・トランプの衝動的発言は、詰めのない、きちんとした事実に基づかない、時には無謀な結論に達し、後に訂正しなくてはならない。

 また、次の通り、大統領が間違った政策を遂行することを防ごうとする人たちが政権内に存在すると言う。

・多くの高官たちは、大統領の関心事項の一部や、同氏の最悪の性向を抑えるために内部で懸命に働いている。
・我々の第一の責任は国家に対するものである。
・我々は、大統領は米国の健全性に害を与えるような行動を取り続けていると確信している。
・トランプ大統領に任命された人々の多くが、大統領が職を去るまでトランプが方向性の誤った衝動を実施するのを妨げながら、この国の民主主義的体制を守ると誓った。

 一方、9月11日発売のボブ・ウッドワード(注:ニクソンをウォーターゲート事件で辞任に追い込んだジャーナリスト)の新著‘Fear: Trump in the White House’も、政権内の人々がいかに大統領の言動に不安を覚え、それらを実施しないようにしてきたかを詳述している。同書によれば、国家経済会議委員長であったゲーリー・コーンが、大統領が机上にある韓国との自由貿易を破棄する書類に署名しないようこっそり持ち出し、それに大統領は気づかなかったと言う。また、同書は、シリアのアサド大統領が化学兵器を使用した後、トランプはアサドを暗殺するよう指示し、マティス長官は同意したが、側近たちには「我々はそんなことは一切しない」と述べた、としている。


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