2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2011年7月21日

 なぜ防衛省は、そうまでしながら急いで馬毛島を2プラス2の協議の場に乗せようとしたのか。防衛省幹部は、背景に普天間問題があると説明する。「米軍再編の最重要課題でありながら、鳩山政権が迷走を繰り返したあげくに沖縄の反感を買ってしまったこの問題、菅政権には到底、膠着状態を解決できるような力はありません。情けない話だが、名護市辺野古に移設するという現行計画を確認するということが精いっぱいで、アメリカ側からは『2プラス2を開催せずともいいのではないか』と打診があったほどです。そこで急遽、馬毛島で艦載機の発着訓練を受け入れるという“手土産”を用意したわけで、準備不足はあえて承知の上のことです」

 2プラス2の開催は4年ぶり。民主党政権になってからは一度も開かれていなかった。普天間問題でぎくしゃくした日米関係をなんとか取り繕いたいという政権の面子のために、地元への説明は後回しにされたというわけだ。

地元の反対強く
第二の普天間問題?

反対派住民に出迎えられた小川副大臣(編集部撮影)

 地元自治体からの抗議を受けて、急遽セッティングされたのが冒頭の地元説明会だ。小川副大臣らは、島に建設を検討しているのは自衛隊の基地であり、施設の維持・管理は自衛隊が実施すると強調した上で、南北方向に滑走路を造成するほか、離島侵攻に対応した訓練場も設置するとの計画を示した。さらに、大災害に備えて、支援物資などを備蓄する計画や、基地に常駐する自衛隊員のための宿舎を種子島に整備する方針などを示した。

 肝心の米軍の艦載機部隊の訓練について小川副大臣は、あくまでも自衛隊基地としての利用計画に付随するもので、飛行ルートは昼間より夜間の方が空域が広くなるものの、掃除機が出す音なみの70デシベルの騒音が出るエリアは種子島上空まで及ばない、米軍兵士の宿舎は馬毛島内に整備する、などと地元の懸念を和らげようと懸命に訴えた。さらに、訓練は1年に2~3回しか実施されず、硫黄島で行われているものも1回あたり10日間程度にとどまり、年間を通して行われるわけではないとも説明。実際の騒音がどの程度なのか、住民に体験できるような方法がないか省内で検討していることまで明らかにした。

 説明のあいだ「ぜひともご理解賜りたい」と何度も繰り返し、平身低頭ぶりを見せた小川副大臣。基地を受け入れれば、防衛施設周辺対策事業や米軍再編交付金などで地元自治体に10年間でおよそ250億円の交付金が入ることになるとの防衛省内部の試算結果まで明らかして、地元の理解を得ようとするのには驚いた。

 しかし、2時間にわたった説明会のあいだ地元の首長たちの反応は終始、厳しいままだった。「地元の頭ごなしに共同文書に署名したことをどう説明するのか」(西之表市長)、「南西諸島の防衛を理由にあげて自衛隊の基地を作るというが、米軍の訓練誘致をごまかすためのまやかしなのではないのか」(南種子町長)。「屋久島は馬毛島から40キロ離れているので、騒音は大きくはないと思うが、観光はイメージが大切。世界遺産への認定で増えた観光客が米軍の訓練によって離れてしまうのではないか」(屋久島町長)。不満を隠すことなく防衛省側にぶつけた。

 説明会後、小川副大臣は「一部に議論がかみ合ったところもあった。今後も職員を派遣して地元の理解を得るようにしていきたい」と記者らに強弁して見せたが、首長らは記者会見で、今後、防衛省側と交渉をする意志はないと応酬。「いったいなんの話をしたくてここまで来たのか」、「現状のままであれば、もう会う必要はない」、「いかなる条件を示されても、反対の意志には変わりない」。西之表市の長野市長はまくしたてた。


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