2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2011年7月21日

 意気込んで種子島入りしたにもかかわらず、小川副大臣らは帰り際にも「もう来るなー」と反対派住民の罵声を浴びながら、そそくさと東京に戻らざるを得なかった。

 馬毛島問題に対する地元メディアの関心は高く、連日のように地元紙やローカルニュースでこの島が取り上げられている。そこでは、あたかも地元住民は反対一色であるかのように報じられることばかりだ。はたして本当にそうなのか。西之表市内を取材してまわると、反対の住民ばかりではないことにすぐに気づく。ピーク時には3万3千人を上回った市の人口は、今や1万7千人足らず。基地建設で地域振興を望む声は少なくないのだ。市内でホテルを経営する男性は、「自然保護や農業だけで食べていくのは、無理だ。騒音は心配だが、それでも受け入れるべきではないだろうか」という。

 こうした潜在的な賛成派の声を掘り起こそうと、防衛省は数名の職員を西之表市に置き、住民の求めに応じて計画の説明を行っている。細かく説明することで不安を払拭してもらい、賛成派が活動しやすい環境づくりをしようという作戦のようだ。早速、7月15日には、市内の賛成派住民が計画の推進を求める団体を立ち上げ、市や市議会に防衛省案に賛成する陳情書を提出した。

 しかし、各自治体では、反対を訴える署名集めを進めているほか、近く合同で大規模な反対集会を開く予定にしており、地元では反対を主張する声が大きい。市議会のなかでは数少ない賛成派と自ら言う市議は、「賛成派と名乗り出るだけで後ろ指を指されかねない。政府・防衛省がぼやぼやしていると、地元は反対派だけになってしまう」と嘆く。

 これではまるで、普天間基地の移設先とすることで日米で合意しておきながら、地元の反対によって膠着状態が続く名護市辺野古の二の舞だ。またも基地問題で躓くのか。馬毛島問題は第二の普天間問題化しかねない様相を見せている。


「WEDGE8月号」特集「馬毛島 知られざる内幕」では、この馬毛島をめぐる米中二大国の思惑や、島のほぼ全ての土地を所有する地権者について取材した以下の記事も読むことができます。
◎平和相銀、核施設、HOPE着陸場……怪構想続出の島を米中も狙った
◎99.6%の地権者 立石勲氏独白「自腹で滑走路を造っているのは世界でも私だけ」
◎対中戦略上 この島は不可欠

◆WEDGE2011年8月号より


 

 

 


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