2022年8月15日(月)

Wedge REPORT

2018年10月18日

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こんな内情だとは思わなかった〟という誤算

 昔から松坂は現状の立ち位置に甘んずることなく高い目標を定め、そこに向かって突っ走ることを生きがいとする性格の持ち主だ。だからこそソフトバンク入りした直後の目標はまず一軍の先発ローテーション入りであり、年間を通じての活躍だった。しかしながら「どれだけ頑張ってアピールしたとしても。一軍に入る機会はもしかすると巡ってこないかもしれない」と考えるようになれば、途端にモチベーションは低下していく。ホークスのチーム内からも「あれだけやる気を失いかけてしまったら結果も伴わなくなるどころか、コンディションだって悪化してしまいますよ」と同情的な声が聞こえてきたように、松坂の心中には入団早々から〝こんな内情だとは思わなかった〟という誤算が生じていたようだ。

 そして案の定、移籍1年目の開幕直前となるオープン戦期間中に右肩のコンディション不良で戦線離脱するハメになる。大型契約で大金をもらっているにもかかわらず、右肩の違和感を理由に一軍で投げない。そんな手負いの怪物に対し、周囲からの風当たりが強まるのも無理はなかった。

 メジャーリーグから9年ぶりに日本復帰が決まった際には熱烈な歓迎ムードだった在福メディアからも手のひらを返してバッシングを浴びせられるようになり、関係性は急速に悪化。チーム内外で孤独感にさいなまれながら、四面楚歌に近い形になった。しかも愛する妻と3人の子どもたちを米国のボストンにある自宅に残し、自分は日本に単身赴任――。並の神経しかない人ならば孤独な状況にも耐えかねて、とうにギブアップしていたことだろう。

 だが、それでも松坂は諦めなかった。このままでは終われない。どれだけ嘲笑されようとも、そう念じながら心を折らずに自分を信じ続けたからこそ今季は不死鳥のごとく蘇ったのだ。プロで3年間もまったく戦力にならず、1勝もできなかった男が復調を遂げたことは前所属先のソフトバンクだけでなく海の向こうのメジャーリーグでも驚きを与えている。

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