2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年10月25日

王毅外相

・ポンペオ長官から訪中の申し出があり、心より受け入れた。最近、米国は継続的に中国との貿易摩擦をエスカレートさせている。また、米国の一連の行動は、中国の台湾その他に関する権利や利益を害しているし、米国は、中国の内外政策に関して根拠のない非難をした。このような行動は、両国の相互信頼に直接に影響する。それは米中関係の将来に蔭を落とすし、両国民の利益に逆行する。

・我々は米国にこのような誤った行動を止めるように要求する。米中両国は、紛争と対立の誤った道ではなく、協力とウィン・ウィンの正しい道を歩み続けるべきである。

・ポンペオ長官は、今回、北朝鮮の核問題及び地域の重要問題について意見交換を望まれている。このことは、国連安保理常任理事国の二大国が、国際社会から信託された責務を果たすために、協議し協力することが必要なことを示している。もちろん、そのような協力は、米中両国の健全かつ安定的な関係に支えられていなければならない。

ポンペオ国務長官

・我々は中国が取った行動に重大な懸念を有している。それらについても協議できればと思う。何故なら、これは大変重要な関係だからだ。

・金正恩委員長との会談とその進展に関しても共有しておきたい。そして、朝鮮半島の非核化の前に話した合同ミッションでも協力して行きたい。

・米中戦略対話が、中国側の事情で開催されなかったことを残念に思う。開催されていれば、両国民にとって、重要な長期的諸課題を話し合う大切な機会となったと思われる。

参考:Michael R. Pompeo ‘Remarks With Chinese Foreign Minister Wang Yi Before Their Meeting’ Department of State, October 8, 2018

 ポンペオ国務長官は、今回、金正恩労働党委員長との会談を終え、その内容を韓国、中国と共有し、今後の北朝鮮の非核化に向けてのプロセスを協議し調整するのが、北東アジア訪問の主目的だっただろう。しかし中国においては、それどころではなかった。

 中国は、トランプ大統領が発動した関税措置に困っており、10月4日のペンス副大統領の演説内容にも神経をとがらせている。(ペンス副大統領の演説については当コラムの10月24日付を参照。)

 それにしても、中国の上から目線には驚かされる。米中両大国が、国際社会から任されて世界の諸問題の解決を図るとの考えは、かつて中国が持ち出した「G2」論を想起させる。この考えは、西側諸国が考える、中小国も大国と同様に主権をもち、それぞれが独立して生き生きとしている国際社会のイメージとは相いれない考え方である。中国は、国連安保理常任理事国であることへの優越感も強いようで、かつて日本が他諸国とともに国連改革を行い、国連安保理常任理事国入りを果たそうとした時に、中国各地でデモや暴動が起きたことを思い出す。

 11月は、インド太平洋地域の小さな国、シンガポールとパプア・ニューギニアで、ASEANやAPECの多国間協議が開催される。中国の誰が、どんな対応や演説をするのか注視する必要がある。

  
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