2024年11月23日(土)

世界で火花を散らすパブリック・ディプロマシーという戦い

2018年9月20日

 今日、海外の世論をめぐり、各国はパブリック・ディプロマシー(PD)を活発に展開するようになった。特に米国はPDの主戦場であり、米国世論をめぐる各国のPD合戦は凄まじい。

 しかし、今、その環境が変容しつつある。その原因が、中国の対米世論工作、つまりはPDの行き詰まりだ。中国ではPDを「公共外交」と呼び、中国のソフトパワーを行使する手段として、これを重視してきた。

サンフランシスコの孔子学院の10周年記念イベントの様子(写真:新華社/アフロ)

米国内で高まる孔子学院批判

 中国は、これまで米国においても活発にPDを展開してきたが、ここに来て手詰まり感を見せ始めた。その一例が、全米に設置されている孔子学院の相次ぐ閉鎖である。例えば、フロリダ州北フロリダ大学は、学内に設置されている孔子学院を、2019年2月には閉鎖する方針を固めた。

 孔子学院の設置は、中国のPDの中でも特に重視される手法の一つだ。孔子学院は中国政府の非営利教育機構であり、中国語や文化の教育をはじめ、宣伝、中国との友好関係の醸成などの一環として世界中の教育機関に設置されている。特に米国における文化・教育の普及活動には熱心である。

 孔子学院をめぐっては、最近になって、米国内で「中国政府の政治宣伝機関と化している」などとの批判が高まる傾向にある。孔子学院は中国政府から資金を得ており、米国の教育機関から、「学問の自由に反する」と批判され、また、学内で中国に有利なプロパガンダを宣伝していると懸念されているのだ。

 このように、日本PDの最大のライバルともいうべき中国の米国に対する働きかけは難航している。日本においても、PDの必要性が叫ばれる今日、こうした状況をどのように捉えるべきだろうか。

 ここでは、米国世論をめぐる中国のPDの実態と、最近の米国におけるPD環境の変容ぶりについて紹介し、その上で、中国のPDの停滞を念頭に、日本の今後のPDのあり方を考えていく。


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