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世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年11月20日

 ロシアの独立系テレビネットワークRTVIのジャーナリストTihon Dzyadko が、Project Syndicateのサイトに「不人気なプーチンの危険」という論説を10月31日付けで寄せ、プーチンの人気に陰りが見えること、およびプーチンは人気回復のために何かをやりかねないことに警告を発している。論旨は、次の通り。

(andrewgenn/Julia August/iStock)

 7か月前、プーチンは77%の得票率で4期目の再選を果たした。しかしロシア世論調査センターによると、今大統領選が行われたとすると、プーチンは47%しか得票できず、決選投票を余儀なくさせられるという。これはロシアと世界にとり危険である。

 プーチンは2000年生活水準を上げ、ロシアを世界的強国とするとの約束で選ばれた。幸運にも石油価格が急騰した。彼は名前を変えたソ連の復活のために働き始めた。米国の世界的指導力と西側の民主化に対抗しようとした。

 最初からプーチンはメディア検閲で権威を強めようとし、石油価格上昇を含め、すべての成功を自分の成果と称した。

 失敗は、プーチンのせいではない。2007年、経済成長が鈍くなり、社会的格差が広がったとき、プーチンはミュンヘン安保会議で米国による世界経済の支配を非難し、バルト諸国へのNATO拡大はロシアに向けられていると示唆した。突然、すべてのロシアの問題は西側が始めた新冷戦のせいにされた。2008年のコソボ独立、ロシアのジョージア戦争はプーチンの「包囲された要塞」の物語を強化した。しかし2013年、プーチン支持率は記録的低さになった。そこでプーチンは大砲を持ち出した。ロシアはウクライナに侵攻し、クリミアを併合した。プーチンの支持率は85%にもなり、ロシア人の大多数にとり、プーチンの権威は絶対的になり、彼の決定は受け入れられるようになった。

 プーチンは、ニコライ2世の内務大臣プレーブの助言、「革命を避けるには、小さな勝利の戦争が必要である」に従っている。プーチンの「小さな戦争」は、彼の立場を強め、反対派を黙らせたが、クリミア併合に対し課された厳しい制裁のため、長期的な結果は深刻である。この制裁のため、ルーブルはドルに対し半分に減価し、物価は上がり、生活水準は落ちている。財政難からロシア政府は定年退職年齢を引きあげたが、90%がそれに反対し、プーチンの緊急アピールも幅広い支持の獲得につながっていない。

 プーチンの18年の統治が何かを教えてくれたとすれば、彼の支持率の低下は誰にとっても良いニュースではないということである。ロシア人は疲れているかもしれないが、プーチンはそうではない。もし彼が彼の権威が弱まっていると感じれば、彼は他人の犠牲において勝利を収める時だと決定するかもしれない。

出典:Tihon Dzyadko,‘The Danger of an Unpopular Putin’(Project Syndicate, October 31, 2018)


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