来たる自動運転の時代、車に求められるデザインとはどのようなものになるのか。多くの自動車メーカーがこの答えを出そうと様々なデザインコンセプトを発表している。そこには大きく3つに分けられる特徴がある。
まず、自動運転である、ということに重点を置いた小型の基本は1人で移動するタイプのもの。グーグルのウェイモが実験車両として発表している車がこのタイプに充当する。次に人が運転する場合と自動運転モードを分けられるもの。テスラのオートパイロットモードなど、多くの今現在発表されているモデルがこのタイプだ。つまり運転席があり、ハンドルもあって人が運転できることが前提となる。
これらを通り越し、自動運転のタクシーなどに利用されるべき車両には運転席が存在せず、中は「動くリビングルームあるいはオフィス」のようなゆったりした空間となる。このデザインコンセプトを発表したのがIcona社だ。
Iconaはイタリア、トリノに本社を置くデザイン会社で、2010年に設立された。その後上海とロサンゼルスにもオフィスをオープンさせ、未来の自動車デザインを手がけて来た。今回同社の自動運転車両のデザインコンセプトである「ニュークレウス」をロサンゼルスオートショーで世界初公開した。
発表に先立ちニュークレウスはドイツのデザイン賞で「乗用車」「ユニバーサルデザイン」の2部門で受賞するなど、未来的なコンセプトと実用化に向けたアイデアが高く評価されている。
ニュークレウスは現時点で多くの自動車メーカーが採用するレベル3自動運転システムから2段階進んだレベル5、つまり完全自動運転を前提としている。そのため運転席がないのはもちろん、通常の窓ガラスも存在しない。一体型に見えるボディだが一部が中から外を眺められる仕様になっており、大きなルーフパネルによる採光も十分だ。ただし外から内部は見えず、プライバシーを保ちながら外の景色を楽しむことも可能だ。
インテリアには大型のスクリーンモニターがあり、映画を楽しんだり仕事をする場合はテレビ会議なども出来る。シートアレンジの自由度も高く、寝そべってリラックスしながらの移動も出来れば友人達、あるいは家族と家庭のリビングルーム感覚で楽しく会話や食事しながらの移動も可能となる。
レベル5の自動運転車両、というのは現時点ではまだ未来だ。そのため今回のオートショーで例えばBMWがかなり似たコンセプトの自動運転車両を展示したが、この車にはまだ運転席がありニュークレウスほどのインテリアの自由度はない。BMWや他の自動車メーカーは現実的にレベル3、そして4と進化する自動運転スタンダードに則した車作りを行う、という制約があるため一気にレベル5のデザインを発表するのは難しい。Iconaの場合はデザイン会社であるが故の自由な発想が可能と言える。