WEDGE REPORT

2018年12月7日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

AIの活用が進む

 米メディアは、広告収入の減少、デジタルコストの上昇といった問題を抱えて、デジタル化の先にあるAIを進めざるを得なくなった。米国の通信社APでは、15年に「AP2020」という20年までの中期経営計画を立ててAIによる仕事の自動化を進展させた。18年の目標は、異なるタイプのニュースを効率的に、情報の信ぴょう性を速く確認して記事の信頼性を上げる。機械学習により、記者がビッグデータを使い、分析と速報の両面を強化し、ビデオを拡充するーなどで、1年ごとに課題を解決しようとしている。

 具体的には、14年からAIを活用して株式、4半期ごとの決算発表、スポーツ記事などの自動化を進めた。それまでは4半期の決算原稿を300本出していたのが、3700本も出せるようになり、記事のエラー率は4%まで下がったという。

 私もニューヨーク特派員時代に決算原稿を処理したが、確認などに時間が掛かり手間と労力を取られていたので、自動的に記事が出来上がるこのソフトができたことは画期的なことだと思った。

ツイッターからネタを見つける

 通信社のロイターはツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を活用している。1日7億本にもなると言われるツィートの中から記事になりそうなネタを見つけてくれるロボット「TRACER(トレイサー)」を導入、ニュースのランク付けから、事実かどうかの確認までしてくれる。

 これを使ってロイターはどのような成果が出たかと言うと、50以上のニュースで世界の通信社の速報に8~60分の差をつけることができたという。具体例では、16年4月14日の午後9時26分(日本時間)に発生した熊本地震では、発生から10分後に速報を打つことができた。このほかスペースXの打ち上げた「ファルコン9」ロケットの爆発や、英国で起きたマンチェスター・アリーナの自爆テロでもロイターの速報は世界の通信社の中でも最も速かったのではないか。このようにツイッターの中から記事を拾えるようになれば、事件事故の現場に記者がいなくても、事件、事故の記事を作ることができる。こうすることで、APやロイターはいままでよりも速く正確な記事を送信し、記者は情報の分析、取材の時間を取れるようになる。

 ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)では、95年からオンラインでの記事購読を有料化した。契約した人を購読者とは呼ばずにオンラインメンバーと呼ぶようになり、編集方針は「デジタルファースト」になった。「WSJ Plus」という富裕層を対象としたメンバーになると、大手企業のトップと食事ができ、ワインのテイスティングなどのイベントに参加できるなど、差別化をすることで契約を増やそうとしている。

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