2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2018年12月18日

苦肉の「代行」

 しかし、後任人事は迷走した。大統領の意中の人物はニック・エアーズ副大統領首席補佐官(36)だった。大統領は重要なポストを埋める際、何人かの候補を競い合わせることが常だったが、エアーズ氏に対しては違った。というのも、同氏は大統領の大のお気に入りで、異常な親しみを示し、同氏に自分が嫌われていないかどうか、側近らに問うこともたびたびだった。同氏の金髪が自分の若かりし頃に似通っていたこともあったとされる。

 ところが、エアーズ氏は「春までの短期間」という条件を付け、右腕として長期的に支えることを求めた大統領に最後まで抵抗、同氏の首席補佐官就任は実現しなかった。大統領は同氏に断られることは想定しておらず、代替候補を全く考えていなかった。「大統領にとって断られたのは屈辱だった」(連邦議員)。

 エアーズ氏に袖にされた大統領は急きょ、娘夫妻や友人らと協議し、最終的に候補を2人に絞った。ミック・マルバニー行政管理予算局(OMB)局長と長年の知り合いであるクリス・クリスティー元ニュージャージー州知事だ。元知事が固辞した結果、ハンディ7のゴルフ仲間でもあるマルバニー氏を「代行」として選んだ。

 「代行」はマルバニー氏の要望だとされ、OMBの局長に名目上留まることになった。「誰がやってもトランプ氏のクビに鈴は付けられない」(アナリスト)ことは明白で、結局は途中で切り捨てられる可能性が高い。マルバニー氏はOMBに戻る道を残して首席補佐官を受け入れた、と見られている。
 
 事実上、なり手がなく苦肉の策として「代行」を付けて一時的にしのいだ格好だが、こうした空気を知ってか、大統領は発表の2時間後、「なりたい人はたくさんいた。念のために言っておく」と負け惜しみのようなツイートをした。

政府閉鎖が現実味

 だが、新年で3年目に入る大統領の行く手にはさまざまな難題が立ちふさがっている。モラー特別検察官によるロシアゲート捜査はその最たるものだが、自由に相談できる側近がいないのが弱みだ。最も必要とする時に、ホワイトハウスに支える部下が少ない。就任以来、閣僚も含め、ホワイトハウスを去った高官は約40人にも上り、離職率は歴代政権と比べて極めて高い。

 大統領が信頼を置く側近は娘夫妻やコーンウエー顧問、ミラー補佐官、サンダース報道官ら少数しかいない。そうした中で、大統領が待ったなしで直面するのは「政府閉鎖」問題だ。大統領は公約であるメキシコ国境の壁建設費50億ドルを予算に計上するよう議会に要求。先般、民主党幹部をホワイトハウスに招いて協議したが、決裂。「建設費が予算に盛り込まれなければ政府機関を閉鎖する」と恫喝した。

 19会計年度の予算成立の期限は12月7日だったが、つなぎ予算で21日まで期限を延長した。21日夜に採決が行われる予定だが、民主党が壁の建設費計上を認めず、トランプ氏が計上されない予算案を拒否すれば、政府機能は一時的に閉鎖されることになる。


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